中国AI企業がアライアンス結成 米制裁に対抗し自立型エコシステムを構築へ

2025年7月26日から29日に中国・上海で開催された世界人工知能大会(WAIC)において、複数の中国AI企業が新たな業界アライアンスを発足させた。
半導体輸出規制を強化する米国への対抗策と位置づけられ、自前のAIエコシステム構築を狙う。
AIと半導体連携へ 中国で2つの業界団体が発足
今回発表されたのは、「モデル・チップ・エコシステム・イノベーション・アライアンス(模芯生態創新連盟)」と「上海総商会AI委員会」の2つの業界アライアンスだ。
目的はいずれも、国内のAI産業基盤を強化し、対外依存を減らすことにある。
前者には、大規模言語モデル(LLM)を手がけるAI企業と、中国国内の半導体メーカーが名を連ねる。
代表的な参加企業であるエンフレームは、「チップからモデル、インフラまで、完全な技術チェーンを結びつける革新的なエコシステムだ」と説明。
ファーウェイ(華為技術)やバイレン、ムーア・スレッドといった中国系GPU(※)企業も参画している。
後者のAI委員会は、AI技術の産業応用をさらに推進することが狙いで、LLM開発企業センスタイム、StepFun、MiniMax、半導体メーカーMetax、Iluvatar CoreXなどが参加した。
WAICでは、複数企業による最先端AI製品の発表も相次ぎ、技術力の高さをアピールする場となった。
中でも注目を集めたのが、ファーウェイが披露したAIコンピューティングシステム「CloudMatrix 384」だ。新型半導体「910C」を384基搭載し、米調査会社セミアナリシスによれば、一部性能で米NVIDIAの最新GPU「GB200 NVL72」を上回る可能性があるという。
※GPU:Graphics Processing Unit(画像処理装置)の略。AI処理や機械学習において高速な計算処理を担う半導体。
中国AI、技術自立へ一歩 アライアンス結成で国際競争に挑む
今回の中国AI企業による業界アライアンスの結成は、米国による半導体輸出規制に対抗する「自立型エコシステム」構築の試みとして注目できる。
最大のメリットは、AIモデルと半導体の国産連携により、海外依存を減らしつつ、技術的独立性を高めようとしている点にある。
しかし一方で、デメリットも無視できない。
まず、現在の国内チップ技術が米国製品と比べて依然として遅れを取っている点は事実であり、外部調達なしに競争力を維持し続けることには限界があるだろう。
また、業界横断的なアライアンスであるがゆえに、研究開発や知財の管理、意思決定のスピードが低下する懸念もある。
複数企業間の利害調整が進まなければ、形骸化する可能性も否定できない。
今回のアライアンスは中国AI産業の独立化を象徴する一手であり、今後の動向は世界のテック地図に少なからぬ影響を与えるだろう。
だが、真の意味でグローバル競争に打ち勝つためには、技術力の底上げだけでなく、国際協調の戦略的再構築が不可欠になると考えられる。