エミレーツ航空がCrypto.comと提携を発表 2026年にも暗号資産決済を導入へ

2025年7月9日、ドバイのエミレーツ航空は、暗号資産取引所Crypto.comと覚書(MoU)を締結したと発表した。
2026年までに同社の決済システムへ暗号資産決済機能を導入する方針で、航空業界におけるWeb3化の動きが一段と加速する見通しだ。
エミレーツが2026年に暗号資産決済を本格導入へ
エミレーツ航空は、決済領域における革新を目的として、暗号資産取引所大手Crypto.comと覚書を締結した。
今回の覚書に基づき、2026年をめどに同社の予約・支払いシステムへ「Crypto.com Pay」を統合する計画である。
Crypto.com Payは、複数の主要暗号資産での即時決済に対応した決済ソリューションで、ユーザーは仮想通貨を用いた航空券購入やサービス利用が可能になる見通しだ。
加えて両社は、同決済の利用拡大に向け、共同プロモーションやキャンペーンの実施にも取り組む予定としている。
覚書は、エミレーツ航空副社長兼最高商務責任者アドナン・カジム氏と、Crypto.comのモUAE事業社長ハメド・アル・ハキム氏によって署名された。
署名式には、エミレーツ航空会長兼最高経営責任者である、アフマド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下も立ち会った。
同航空はこれまでもWeb3やメタバースの活用に意欲的であり、今回の提携はその流れを後押しする動きといえる。
今回の提携は、ドバイ政府が進めるキャッシュレス社会の実現戦略と軌を一にする動きとみられる。
Crypto.comはすでに5月にドバイ財務局(DOF)と覚書を交わし、ステーブルコイン(※)を活用した公共料金支払いモデルの開発を進めている。
3月にはCrypto.comがデリバティブ商品の提供に関する限定ライセンスをドバイ暗号資産規制機関(VARA)から取得した。
※ステーブルコイン:米ドルなど法定通貨に価値が連動するよう設計された暗号資産。

ドバイの「キャッシュレス化」戦略と暗号資産普及の可能性
エミレーツ航空とCrypto.comの提携は、航空業界における暗号資産活用の象徴的な動きとして注目されるだろう。
最大のメリットは、国際的な顧客基盤を持つエミレーツが、Web3領域へのアクセシビリティを大きく広げる起点となり得る点にある。
これにより、暗号資産保有者は両替や為替手数料を意識せずに決済でき、旅客体験の利便性向上が期待される。
一方で、デメリットも無視できない。
各国の法制度や税制が整っていない中で、航空券の決済という高額トランザクションに暗号資産を適用するには、慎重な設計とセキュリティ対策が不可欠だと予想される。
加えて、高額な決済を扱う航空業界では、技術的なトラブルやセキュリティ上の不備が信頼性を損ねるリスクがあり、実装には段階的な検証が求められるだろう。
とはいえ、中東地域の主要企業がWeb3技術を取り入れることで、観光・航空・行政サービスの連携領域でもデジタル資産が活用される下地が整いつつある。
今後、同様の動きが他の航空会社や旅行業界にも波及する可能性がある。