メタが「超知能」部門に破格の人材投資 元アップル幹部に290億円超提示か

2025年7月10日、メタ・プラットフォームズが社内の「スーパーインテリジェンス(超知能)」部門の新メンバー採用において、元アップルの著名エンジニアに対し、2億ドル(約290億円)超の報酬パッケージを提示したと報じられた。
メタが元アップル幹部を数億ドルで引き抜き
複数の関係者によると、メタはアップルでAIモデル開発を率いていたルオミン・パン氏に対し、数年間で数億ドル規模となる報酬パッケージを提示し、採用に成功したようだ。
これはティム・クックCEOを除き、同社の他幹部と比較しても破格の報酬であり、アップルはこの引き抜きに対して明確な対抗策を講じなかったという。
メタが立ち上げたスーパーインテリジェンス(※)・チームは、人間を超える知的能力を持つAIシステムの開発を目的とし、ギットハブ元CEOのナット・フリードマン氏や、AIスタートアップ創業者のダニエル・グロス氏もすでに加わっている。
さらにメタは、スケールAIの共同創業者アレクサンドル・ワン氏を最高AI責任者(CAIO)として迎えるべく、同社の持ち分49%(評価額143億ドル)を取得したとされる。
これにより、生成AI領域における研究開発体制を一層強化する構えだ。
報酬は業績連動型で、数年にわたり支給されるが、成果や株価によっては満額支払われない可能性もある。
なお、メタやアップルはコメントを控えており、具体的な契約内容の全容は明らかになっていない。
※スーパーインテリジェンス:人間の知的能力を超えるAIシステムのこと。
超一流人材の争奪戦が常態化 AGI開発に格差の懸念
メタが人材採用のため、数億ドル超の報酬を提示したことは、AI業界における人材競争の転換点となり得る。
今後は、こうした高額報酬による獲得競争が他の大手テック企業にも波及し、AGI(汎用人工知能)や生成AI分野における「超一流人材」の奪い合いが常態化する可能性が高い。
優秀な人物を囲い込めるかどうかによって、各社の技術開発スピードや研究の方向性に大きな格差が生まれることも想定される。
一方で、トップ人材の過度な集中が進めば、スタートアップや学術機関からの人材流出が顕著になり、研究開発の多様性や中長期的な視点を持つ基礎研究が弱体化する懸念もある。
資本力のある企業が人材と技術の主導権を握る一方で、技術倫理や公平性の観点からは、健全なエコシステム形成が課題として浮上するだろう。
今後数年は、人材・資本・政策が複雑に絡み合いながら、AGI開発の覇権をめぐる競争がより激化していくと予想できる。
今回のメタの動きは、そうした時代の幕開けを象徴する一手にすぎないのかもしれない。