DeNA、新規企画に「生成AIプロトタイプ」必須 企画と実装の乖離防止へ

2025年7月4日、ディー・エヌ・エー(DeNA)が新設した「AIイノベーション事業本部」において、新規プロダクトの企画提出時に生成AIで開発したプロトタイプの提出を必須とする制度を導入していることが明らかになった。
プロトタイプが企画の通行証に DeNAが新制度
DeNAが新設したAIイノベーション事業本部では、企画段階から生成AIを活用する制度を導入している。
対象はエンジニアのみならず、ビジネス職やデザイナー職を含む同本部の全職種だ。
制度の柱となるのは「書類だけの企画は不可」であり、必ず生成AIを活用したプロトタイプの提出が求められる。
背景には、前身組織において見られた「企画書と実装内容の乖離」がある。
従来は、企画書完成後にプロトタイプを開発する中で仕様が大きく変わるケースが頻発していた。
これを解消すべく、生成AIの普及を受けて「実装の方が早く、判断も確実になる」との考えから制度が整備された。
実際、同部署では既に15件以上のプロトタイプ付き企画が提出されており、使用ツールにはAI開発ツールや、AIデザインツールが活用されている。
制度導入以降、特に新卒1~2年目の若手社員による提案が活発化しているのが特徴だ。
企画が通るまでの期間は、開発自体に2〜3日、調整を含めても約2週間と、従来よりもスピード感のある進行が実現しているという。
実装重視で変わる企画の評価軸 創造性との両立なるか
DeNAが導入した「生成AIプロトタイプ必須」制度は、アイデアの実現性を早期に検証でき、職種を超えた連携やスキル共有が促進されるとみられる。
特に若手社員の提案が活発化しており、実力重視の風土づくりや提案機会の平等化が進んでいる点が注目できるだろう。
一方で、この制度には課題もある。
生成AIツールの活用には一定のスキルが必要で、リテラシーの差が提案機会の不平等につながる恐れもある。
また、AIツールに頼りすぎることで発想が偏り、創造性が制限されるリスクも考えられる。
この制度は、生成AIの活用を前提とした企画開発の“実験的取り組み”といえる。
現在は一部部門に限られているが、成果次第では他部門やグループ会社への展開も見込まれるだろう。
AIはあくまで支援手段であり、創造性の代替ではない。プロトタイプ前提の提案制度が、提案者の裾野を広げる一方で、AI依存による創造性の画一化を招く懸念も存在する。
制度が「誰もが提案できる環境」を広げるのか、それとも“AI任せ”の形骸化を招くのかは、今後の運用と社内文化の定着にかかっているだろう。