後払い決済トラブル、3年で3倍に 国民生活センターが注意喚起と業界へ要請

2025年7月2日、国民生活センターは、インターネット通販などで普及が進む「後払い決済サービス」に関連した消費者トラブルが過去3年間で3倍に増加したと発表した。
センターは利用時の注意喚起とともに、業界団体に対し取引の適正化を求めている。
後払い決済、請求トラブルや不正請求が急増
国民生活センターによると、「後払い決済サービス」に関する消費者からの相談件数は、2021年度の1万4555件から、2024年度には4万3964件へとおよそ3倍に増加した。
2025年度も5月末時点ですでに5320件が寄せられており、今後の更なる増加が懸念されている。
後払い決済サービスは、商品の受け取り後にコンビニや銀行などで代金を支払える仕組みであり、クレジットカード情報を入力せずに済む点が利便性として評価されてきた。
一方で、トラブルの事例としては「解約済みの定期購入商品の請求が続く」「購入の意思がない商品の請求が届く」などが挙げられている。
背景には、消費者対応が不十分な販売業者が決済事業者の加盟店になっているケースがあるとされる。
国民生活センターは、販売業者とのトラブルが発生した場合には、決済サービス事業者にも連絡するよう勧めており、「消費者ホットライン188(いやや!)」の活用も呼びかけている。
国民生活センターは今回、個人消費者に対して表示内容や契約条件をよく確認した上で慎重に利用するよう注意喚起を行うとともに、業界団体にも対応を求めた。
具体的には、加盟店契約時の初期審査の厳格化、モニタリングの継続、トラブル発生時の迅速な随時調査対応、不正利用の防止策などを強化し、取引全体の適正化に努めるよう要望している。
利便性と安全性の両立へ、業界と利用者に求められる変化
後払い決済サービスは、クレジットカード情報を入力せずに買い物ができるという利便性の高さが最大の魅力といえる。
特に若年層やカード保有に抵抗のある層にとっては、利用のハードルが低く、ネットショッピングにおける決済手段の選択肢を広げる存在となっている。
一方で、消費者トラブルの急増は深刻な課題である。
特に定期購入契約やキャンセル手続きにまつわる不透明な請求が多発しており、消費者が契約内容を十分に理解できていない状況が今回浮き彫りとなった形だ。
また、販売業者の審査体制が甘いまま決済事業者のネットワークに参入している現状も、サービス全体の信用性を損なう要因であると考えられる。
今後、後払い決済はEC市場の拡大とともに一定の需要を維持すると見込まれるが、信頼性の確保が成長の前提条件となるだろう。
業界では、ガイドラインの見直しや加盟店審査の厳格化が進み、AIによる不正検知など技術的な安全対策も本格化すると予想される。
また、学校教育や自治体を通じた金融リテラシー向上の取り組みも広がり、利用者の理解を深める仕組みが整備されていく可能性が高いだろう。
利便性と安全性を両立させた制度設計が進めば、後払い決済はより信頼されるインフラとして定着していくと考えられる。