梶裕貴氏の音声AIプロジェクト「そよぎフラクタル」 3Dライブで人間とAIの共演へ

2025年6月30日、声優・梶裕貴氏の音声AIプロジェクト「そよぎフラクタル」が、2026年3月8日に東京ガーデンシアターで3Dライブ「梵そよぎ 1st EXPO『0rigin』」を開催すると発表した。
「梵そよぎ」初の3Dライブ開催決定、朗読劇やデュエットも
「そよぎフラクタル」は、梶裕貴氏の声をもとに開発された音声合成ソフト「梵そよぎ」を中心に展開されるAIキャラクタープロジェクトである。
その初の大型ライブイベント「そよぎEXPO」が2026年3月8日、東京ガーデンシアターで昼夜2公演にわたって開催される。
本イベントでは、3Dモデル化された「梵そよぎ」が舞台上に登場し、朗読劇やデュエット歌唱を実施。
梶氏自身も登壇し、同じ「声」を共有するAIとの協演が披露される。セットリストは昼夜で一部異なる構成となる予定だ。
ライブの演出には、澤野弘之氏、Revo(Sound Horizon / Linked Horizon)氏、森久保祥太郎氏といった、梶氏と縁の深いアーティストらが新曲を提供する。
キービジュアルは『僕のヒーローアカデミア』の原作者・堀越耕平氏が描き下ろした。
このライブに向けて、7月15日から目標金額1000万円のクラウドファンディングが開始される。
支援金は演出・音響・映像の制作費や書き下ろし楽曲を収録したアルバム制作費に充てられる。形式はAll-or-nothing方式で、未達時は全額返金となる。
梶氏は「最先端のデジタル技術と声優によるアナログ表現が交差するとき、ただの“再現”でも“仮想”でもない、今この瞬間だけのパフォーマンスが生まれると信じています。」とコメントしている。
AIと共演する声優 “梵そよぎ”が示す表現の拡張と限界
「そよぎフラクタル」3Dライブは、声優・梶裕貴氏と音声AI「梵そよぎ」の共演を通じて、人間の表現力をAIが拡張する新たな可能性を提示している。
本人の声をもとに生成されたAIとのデュエットや朗読劇は、従来のVTuberや音声合成キャラクターとは異なる“質の継承”という独自性を持ち、視覚・聴覚の両面で自然な没入感を生むだろう。
一方で、AIが演技において一定の表現力を持つようになれば、“感情の機微”までもが模倣可能となり、声優の役割そのものが再定義される可能性もある。
さらに、本プロジェクトは梶裕貴氏という稀有な知名度やブランド力を前提として成立している側面が強く、他の声優に同様のモデルを横展開できるかは依然として未知数である。
こうした中、「そよぎフラクタル」は、声優とAIの共演による新しいライブ表現の“雛型”として、業界に先行事例を示すものとなるだろう。
AI表現の透明性や、ファンと共に作り上げるプロセスを重視する制作体制は、今後のエンタメビジネスやパフォーマンスアートにおいて、一つの転換点となる可能性がある。