東京電力、データセンター事業に本格参入へ 「新しい本業」としてAI時代の柱に

2025年7月1日、東京電力ホールディングス(HD)が2027年度をめどにデータセンター(DC)事業へ本格参入する方針を読売新聞が報じた。
再建計画で「新しい本業」と位置づけ、独自の省エネ技術を武器にAI需要の拡大を新たな成長機会とする構えである。
AI需要の拡大を見据え、東電HDがDC事業に本格参入
東京電力HDは、現在策定中の再建計画「総合特別事業計画」の中で、データセンター事業を「新しい本業」として明確に位置づけた。
これまでグループ会社を通じて関連事業を展開してきたが、今後は本体が直接フロントに立ち、DCビジネスを牽引する方針である。
一方で、柏崎刈羽原発の再稼働にめどが立たない現状を踏まえ、同事業を将来の収益基盤として本格的に育成していく考えだ。
東電HDが注力するのは、省エネ性能に優れた中小規模のデータセンターである。
同社は空調効率を高める独自技術を開発しており、消費電力を従来の4分の1に抑えることが可能になるという。
2026年度には約2億円を投じ、横浜市内にショールームを設置し、国内外の通信・IT企業、官公庁などへの営業展開を強化する。
背景には、AIの普及によるDC需要の急拡大があると推測できる。
経済産業省は省エネ義務化を視野に、2025年度中にも新設DC向けの省令改正を進める構えであり、省エネ性能の高さは事業競争力の鍵を握るだろう。
また、長年再稼働の見通しが立たない柏崎刈羽原発との連携も、将来的な電力供給体制の強化という観点で注目される。
AI時代の電力需要を収益機会に 原発再稼働との相乗効果も
国の認可法人である「電力広域的運営推進機関」は、データセンターの最大需要電力が2034年度には616万キロワットに達し、原子力発電所6基分に相当すると推計している。
これは2025年度比で約13倍にあたり、今後のインフラ需要の中核としてDCの存在感が一層高まる見通しだ。
こうした成長市場において、省エネ型DCを展開する東電HDの動きは、エネルギーインフラを担う企業ならではの事業転換といえる。
また、長年にわたって再稼働の遅れに直面してきた柏崎刈羽原発(新潟県)が将来的に稼働すれば、DCへの電力供給能力を大幅に高めることが可能となるだろう。
その結果、再稼働とDC展開が相互補完的に作用し、収益と供給の両面で安定性を得られる可能性がある。
一方で、AI処理に伴う電力消費増は温室効果ガス排出のリスクも伴うため、省エネ技術の進化と持続的な電源構成の見直しが不可欠となる。
政府の規制動向や市場ニーズに柔軟に対応できるかが、今後の成否を左右すると言えるだろう。