ソフトバンク×博報堂が共催ハッカソン、福島の魅力をAIで発信 最優秀は地酒提案サービス

2025年6月12日、ソフトバンクと博報堂テクノロジーズは、福島テレビの協力のもと、福島県の魅力をAIとデータで再発信するハッカソンを東京都内で開催した。
最優秀賞には、日本酒と伝統工芸を掛け合わせた提案が選ばれた。
日本酒と伝統工芸を融合 AIが「福島らしさ」を提案
ソフトバンクと博報堂テクノロジーズが主催した今回のハッカソン(※)では、両社の社員ら計33人が5チームに分かれて参加した。
福島テレビが提供した報道データを活用し、福島県の魅力を引き出すAIサービスを開発することが目的である。
参加者は5月に行われた勉強会とアイデアソンを経て、約1カ月かけてプロトタイプを作成。
6月12日に都内でその発表会が行われ、実現性や創造性、プロモーション力、技術力の4項目で審査された。
最優秀賞に輝いたのは、「AIが作る、わたしの酒と器。~福島の日本酒×伝統工芸×あなたの感性~」という作品である。
チャット形式のAIがユーザーの気分や好みに応じて福島の地酒を提案し、さらに画像生成技術を用いて自分だけの器デザインも作成できる仕組みだ。
ソフトバンクの牧園啓市専務執行役員兼CIOは「(日本酒の表現を)データとして集めて提案することは難しいが、たくさんのデータが集まれば実現できる。AIの正しい使い方」と講評した。
また、2位には観光促進アプリ、3位には地元の贈答文化に着目した「おふくわけ」、福島テレビ賞には推し活を支援する生成AIツール「FUKUSHIMA推し活メーカー」が選ばれた。
※ハッカソン:限られた時間内でソフトウェアやサービスのアイデアを開発・発表するイベント。
観光促進の可能性も、地方課題にAIでアプローチ
今回のハッカソンは、AI活用によって地方が抱える人口減少や魅力発信の課題にアプローチする取り組みとして評価できる。
選ばれたアイデアはいずれも、観光や地域経済に波及効果をもたらす可能性があるだろう。
特に最優秀案は、スマートフォンひとつで日本酒と伝統工芸に触れることができる設計で、観光意欲の喚起やオンライン購入への誘導といった応用展開も期待できる。
福島への関心を高める入り口として、AIが新たな価値創出を担う形だ。
しかし、課題も存在すると思われる。
まず、アイデアと技術の域を出た「実装・継続性」の担保がなされていない点だ。
今回のようなプロトタイプ開発は、商用化に向けたインフラや運用体制の構築が伴わなければ、アイデア止まりで終わる危険性を孕む。
持続可能な運用には、地域企業や住民を巻き込む仕組み作りが鍵となるだろう。
とはいえ、今回のようなハッカソン型共創モデルは、短期間でプロトタイプを構築できる即応性があり、技術企業・地域行政・メディアが連携しやすい仕組みでもある。
実際に、既に多くの自治体が人口減少や情報発信力の弱さに課題を抱えているため、AIを活用したブランディング支援や観光促進のニーズは高まっている。
今後、類似の取り組みが他地域に拡大する可能性も十分にあるだろう。