AIによる山火事予測に誤算 米加州の焼失面積、予測の10倍以上に拡大

2025年6月9日、米ロイターは、カリフォルニア州で1月に発生した大規模山火事について、電力会社SCEが導入したAI予測モデルが実際の火災規模を大幅に過小評価していたと報じた。
実際の焼失面積は予測の10倍以上に達しており、モデルの信頼性が問われている。
米電力SCEのAI火災予測、実被害を過小評価か
カリフォルニア州ロサンゼルス東部のイートン地区で、2025年1月7日に発生した山火事を巡り、エジソン・インターナショナル傘下のサザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)が活用したAI予測モデルの精度に疑義が生じている。
SCEは、山火事につながるおそれのあるインフラの異常を検出するAIアルゴリズムへの期待感を示していた。
ロイターが入手した内部文書によれば、SCEのAIモデルは火災発生後8時間以内の焼失面積を最大1000エーカーと見積もっていたが、実際には最終的に約1万4000エーカーが焼失。
9400戸超の住宅・建物が被害を受け、17人が命を落とした。
SCE側は、AIモデルが風向きの急変や可燃物の密度といった環境要因を十分に反映していなかった可能性があると認める一方、「意思決定を支援するためのモデル構築や気象予測には高い精度と自信を持っている」と表明した。
火災原因については依然として調査中としている。
また、強風や乾燥で山火事の恐れが高まる中、同社はこのAIモデルを電力供給停止の判断材料として使用していたことも明らかにした。
AIの予測限界が露呈 24時間対応モデルへの転換が急務に
今回の事例は、災害予測におけるAI技術の限界を浮き彫りにしたといえる。
SCEのモデルは発災から8時間以内のシナリオしか想定しておらず、時間経過に伴う火災拡大の可能性を十分にカバーしていなかった。
SCEは、24時間対応したシミュレーション体制への移行を検討していると表明。
2025年には火災モデル改良などに800万ドルの予算を投じる計画を進めており、これは2018年時点の4倍規模となる。
一方で、AI予測に依存した意思決定には依然として課題が残る。
AIは過去データに基づく推論を行うため、想定外の気象変動や地形変化に弱いという根本的な構造的制約を抱えている。
SCE幹部が「気象予測とモデルには自信がある」とする中でも、予測と現実の乖離は企業の説明責任を強く問う事態となった。
AIによる災害予測は、人的判断と併用することで真価を発揮するとの指摘もできる。
今後は、技術導入とともに、モデルの検証体制や適用範囲の見直しが急務となるだろう。