Anthropicが5カ月で売上3倍 生成AI市場で急拡大する企業戦略とは

2025年5月30日、米ロイターは、AIスタートアップAnthropicの年間売上高が30億ドルに到達し、わずか5カ月で約3倍に拡大したと報じた。
生成AIツールの企業導入が加速する中、同社の急成長が注目を集めている。
企業向けAI市場で急成長、年間売上30億ドルに
ロイターが匿名情報筋の話として報じたところによると、Anthropicの年間売上高は2024年12月時点で約10億ドルだったが、2025年3月には20億ドルを超え、5月には30億ドルに達したという。
同社は元OpenAIの幹部であるDario Amodei氏とDaniela Amodei氏によって2021年に設立された。
現在は生成AIチャットボット「Claude」シリーズを主軸に事業を展開しており、企業向けSaaS提供を中心とした収益モデルを構築している。
OpenAIが個人ユーザー向けに「ChatGPT」で先行する中、Anthropicはセキュリティやプライバシーへの配慮を前面に出した企業向けサービスに特化。
ユーザーデータを明示的同意なく学習に使用しない姿勢が信頼を集めており、顧客の間での評価も高まっている。
最新モデル「Claude Opus 4」は、同社によれば「世界最高レベルのコーディングモデル」とされており、技術面でも着実な進展を見せている。
雇用変化と生産性の転換点 生成AIがもたらす光と影
急拡大を続ける生成AI企業の存在は、経済構造にも変化を及ぼしつつある。
Anthropicの共同創業者Dario Amodei氏は、メディアAxiosのインタビューで「今後5年以内に、AIはエントリーレベルのホワイトカラー職の半数を代替する可能性がある」と警告している。
実際、ベンチャーキャピタルSignalFireのレポートでは、パンデミック以降におけるテック業界での新卒採用数の減少が報告されており、業務の自動化が背景にあると指摘されている。
一方で、Amodei氏は「2026年には、AIを活用した一人企業が10億ドル規模の企業価値を持つ可能性もある」との見解を示しており、個人単位での生産性が飛躍的に向上する未来像も描かれている。
とはいえ、技術進化がもたらす恩恵とリスクは表裏一体であり、企業・社会・政策の各レベルでの慎重な対応が求められる段階に入っていると言える。