国内小売企業のハンズは、ハンズ渋谷店を2026年11月に閉店すると発表した。賃貸借契約の満了に伴う営業終了であり、1978年の開業から48年余り続いた同店は、渋谷の街とともに歩んだ歴史に幕を下ろす。
渋谷店、48年の歴史に幕
2026年5月25日、株式会社ハンズは、東京都渋谷区宇田川町にあるハンズ渋谷店について、2026年11月をもって営業を終了すると発表した。理由は賃貸借契約の満了であり、最終営業日は決定次第告知される。
閉店までは、「最高のフィナーレへ向かって各種イベントを企画しております」と説明している。
ハンズ渋谷店は1978年9月9日に開業した。店舗面積は5,494.20平方メートル、取扱商品数は約10万SKU(※)にのぼる大型店であり、長年にわたり国内外の来店客に利用されてきた。
住まい、手づくり、道具、素材、生活用品を横断的に扱い、単に商品を買うだけではなく、売場を歩きながら発見する店舗体験を提供してきた点が特徴である。
同店を象徴してきたのが、渋谷の坂道の地形を生かした独特の館内構造だ。館内は計24フロアで構成され、1つの階層をA・B・Cの3区画に分けたらせん状のつくりになっている。24フロアを結ぶ階段は合計408段あり、来店客は階段を上り下りしながら、思いがけない商品と出会う「迷う楽しさ」を味わってきた。
現在、ハンズ渋谷店では「生活編集図鑑」をテーマにした売場企画を展開している。図鑑をめくるように各フロアを巡り、実際に試し、迷いながら選べる購買体験を打ち出す内容である。
ハンズは、渋谷店で培ってきたリアル店舗ならではの「ワクワクするお買い物体験」を、今後も全国のハンズや新たな店舗へ引き継ぐとしている。
※SKU:在庫管理上の商品単位。色、サイズ、仕様などが異なれば別SKUとして扱われる。取扱SKU数は、店舗がどれだけ多様な商品を扱っているかを示す指標の一つである。
体験価値継承が今後の焦点に
今回の閉店のメリットをあえて挙げるなら、ハンズが大型旗艦店に依存しない店舗体験を再設計する契機になり得る点にある。賃貸借契約の満了を機に、地域ごとの需要に合わせた売場づくりやイベント型の接点づくりを強める余地は生まれる。
一方で、デメリットは大きい。ハンズ渋谷店の価値は、商品数や立地だけでなく、建物構造、階段、売場密度、渋谷という街の空気が結びついた固有の体験にあった。
ECや効率的な商業施設では再現しにくい「目的なく歩く楽しさ」が失われることは、長年のファンやクリエイター層にとって象徴的な喪失となる可能性がある。
今後の焦点は、閉店を単なる撤退ではなく、ブランド再定義の機会にできるかどうかだ。効率化やタイパ重視の消費行動が広がる一方で、実物を手に取り、時間をかけて選ぶアナログな購買体験への需要も残っている。
ハンズがその価値を新しい店舗や企画に翻訳できれば、渋谷店の48年は終わりではなく、次世代のリアル店舗づくりへ受け継がれる財産になる可能性が残されている。
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