2026年5月21日、米トランプ大統領がAIに関する大統領令の署名を延期したとロイターが報じた。中国に対する技術的優位を維持する必要性を理由に、規制内容の見直しに踏み切った格好だ。
AI大統領令、直前で署名延期
トランプ大統領は21日、AIに関する大統領令(※)への署名を延期したと明らかにした。当初は同日午後、主要AI企業のCEOらが出席する式典で正式に発表される予定だったが、「内容の一部が気に入らなかった」として直前で方針を転換した。
同大統領令は、AIおよびサイバーセキュリティーの監督強化を柱とするもので、新たなモデルの展開に対する審査や安全対策の義務付けが含まれるとみられている。
また、米メディアは、イーロン・マスク氏やマーク・ザッカーバーグ氏、さらに元政権のAI責任者らによる働きかけが延期の背景にあったと報じている。これらの関係者は、規制がAI開発のスピードを鈍化させる点に懸念を示していたとされる。
トランプ氏は記者団に対し、「米国は中国をリードしている。その優位を損なうようなことは望まない」と述べ、国家間競争を強く意識した判断であることを示唆した。ただし、具体的にどの条項が見直し対象となるかは明らかにされていない。
※大統領令:米国大統領が議会の承認を経ずに発する行政命令。迅速な政策実行が可能である一方、内容次第では産業活動や規制環境に大きな影響を及ぼす。
競争優先の利点と規制遅れのリスク
今回の判断は、AI分野における競争力維持を重視した政策判断とみられる。規制を抑制することで企業の開発スピードが維持され、イノベーションの加速や投資拡大につながる可能性がある。特に米国のAI企業にとっては、柔軟な開発環境が国際競争力を支える要因の一つになると考えられる。
一方で、規制の先送りはリスクも伴う。AIの高度化により、誤用やサイバー攻撃といった安全保障上の課題が拡大しているとの指摘があり、監督体制の不備が社会的信頼の低下を招く恐れもある。企業任せの対応には限界があるとの見方も根強い。
今後は、産業界の意見を取り込みながら、競争力と安全性の両立を図る制度設計が求められる可能性がある。規制のタイミングと強度をどこに設定するかが、米国のAI戦略全体に影響を与える重要な分岐点となりそうだ。
関連記事: