2026年5月20日、米グーグルは複数サービスを横断して利用できるAIショッピングカート「Universal Cart」を発表した。米国内で今夏より提供を開始し、検索やGemini、YouTubeなどと連携する。AIが購買判断を支援する新たなコマース体験の実現を狙う。
AIが担う次世代ショッピング基盤
グーグルが発表した「Universal Cart」は、同社の主要サービスを横断して商品を一元管理できる新たなショッピング機能である。Google検索やGemini、YouTube、Gmailといった異なる接点から、ユーザーはシームレスに商品をカートへ追加でき、販売事業者をまたいだ統合管理が可能となる。
商品追加後は、生成AI「Gemini」がバックグラウンドで稼働する。価格履歴の分析や値下げ・再入荷の通知を自動で行い、購買タイミングの最適化を支援する仕組みだ。さらに、自作PCのように複数パーツを組み合わせるケースでは、互換性の有無を判定し、問題があれば代替製品を提示するなど、高度な推論にも対応する。
決済面ではGoogleウォレットと連携し、保有ポイントや特典を踏まえた最適な支払い方法を提示する。実際の購入はGoogle Payを通じた決済、もしくは各販売事業者のサイトへの遷移で完了する設計である。初期段階ではNikeやWalmartなど一部ブランドに限定されるが、順次拡大される見込みだ。
こうした機能は、グーグルが推進する「エージェント型コマース(※)」の中核を担う。日々10億回以上利用されるショッピング機能と、600億点超の商品データを持つショッピンググラフを基盤に、購買体験そのものの再構築を目指す動きと言える。
※エージェント型コマース:AIがユーザーに代わり商品選定や比較、購入判断などを自律的に行う購買モデル。従来の検索中心のECから、意思決定の自動化へと進化する概念を指す。
利便性と支配力 進化の両義性
Universal Cartは、購買体験の効率化を大きく前進させる可能性がある。複数サイトを横断する比較や在庫確認、価格追跡といった作業がAIに代替されることで、意思決定の負担は大幅に軽減されると考えられる。特に高価格帯商品や構成が複雑な製品では、判断の質そのものが向上する効果も期待される。
一方で、AIへの依存が進むことで、購買プロセスの透明性が低下する懸念もある。どの商品が優先的に提示されるのか、そのロジックが不透明な場合、ユーザーの選択が間接的に誘導される可能性も否定できない。利便性の裏側で、アルゴリズムの信頼性が重要な論点となる可能性がある。
また、小売事業者にとっては販売主導権の変化も無視できない。顧客接点がGoogleのプラットフォームに集約される場合、価格や表示順位の競争が一層激化し、独自ブランドの訴求が難しくなるリスクも考えられる。結果として、プラットフォーム依存の度合いが高まる可能性がある。
今後は、同様のエージェント型機能が他のテック企業にも広がる可能性がある。検索や比較を起点とした従来のECから、AIが購買を主導する段階へ移行する中で、利便性と公平性のバランス設計が競争力に影響を与える要素の一つになると考えられる。
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