日立製作所とパナソニック コネクトは、端末やパスワードに依存しない次世代デジタル身分証の実現に向けて協業を拡大すると発表した。
顔認証と生体情報由来の鍵生成技術を組み合わせ、行政や金融、交通分野での活用を目指す。
顔認証で使う次世代身分証
2026年4月21日、日立製作所とパナソニック コネクトは、端末やパスワードに依存しない次世代デジタル身分証の実現に向けて協業拡大を発表した。
今回の協業では、日立の公開型生体認証基盤PBI(※)と、パナソニック コネクトの顔認証技術、開発中のウォレットアプリを組み合わせる。
個人が自身の身元情報や資格、年齢などの属性情報を安全に管理し、必要な情報だけを提示できる「自己主権型アイデンティティ」の実現を目指す。
従来のデジタル本人確認は、IDやパスワード、スマートフォン内の秘密鍵に依存する仕組みが一般的だった。
一方で、パスワードの使い回しや端末紛失時の不正利用、個人情報の集中管理による漏えいリスクが課題となっていた。
特にDigital Identity Walletでは、秘密鍵を端末内で保管する必要があり、復元用パスワードの管理負担も大きかった。
日立のPBIは、認証や取引のたびに本人の生体情報から秘密鍵を生成し、処理後には即座に破棄する仕組みを採用する。
これにより、端末内に鍵を残さずに本人確認を行えるため、漏えいや盗難のリスクを抑えられる。
パナソニック コネクトは、顔認証とウォレットアプリを組み合わせることで、行政手続き、施設入退場、金融機関での本人確認、交通機関の割引適用など幅広い場面での活用を想定している。
さらに、スマートフォンを持たない高齢者向けに、マイナンバーカードと顔認証端末を組み合わせた利用も検討する。
災害時には避難所での本人確認や支援物資の配給にも活用する構想で、2026年度中に実証を進め、2027年度以降の本格展開を目指す。
※PBI:日立が開発する公開型生体認証基盤。本人の生体情報から認証時ごとに秘密鍵を生成し、処理後に破棄することで、端末内に鍵を保持せずに本人確認や電子署名を行える技術。
AI時代の本人確認基盤へ
今回の取り組みは、単なる認証手段の刷新にとどまらず、AI時代に必要となる本人確認基盤の整備という意味合いも持つと言える。
生成AIやAIエージェントの進化により、ディープフェイクを使ったなりすましや、本人の意思を介さない契約・決済といった新たなリスクが現実味を帯びているためだ。
顔認証と生体由来の電子署名を組み合わせれば、「誰が操作したのか」だけでなく、「本人の意思で行われたのか」まで確認できる可能性がある。
金融や行政など高い信頼性が求められる領域では、大きな優位性につながると考えられる。
一方で、生体情報を認証の中心に据える仕組みには慎重な運用も必要になるだろう。
顔認証の精度や誤判定、認証できなかった場合の代替手段、個人情報保護への不安など、実際の運用段階で解決すべき課題は少なくない。
高齢者や障害者を含め、誰でも使える仕組みにできるかも重要な論点となり得る。
それでも、端末やパスワードに依存しない認証基盤が実用化されれば、本人確認のあり方は大きく変わる可能性がある。
今後は自治体や金融機関、交通事業者がどこまで導入を進めるかが、社会実装の広がりを左右することになりそうだ。
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