2026年4月14日、博報堂とビザスクは資本業務提携を締結し、「エキスパートAI」の共同開発を発表した。専門家の判断軸を学習したAIと実在の知見を連動させ、企業の意思決定を一体的に支援する新たな仕組みの構築を目指す。
専門家思考を再現するAIを共同開発
両社は、専門家の観点や判断基準、思考プロセスを学習するAIサービス「エキスパートAI」の共同開発を中核に据えた資本業務提携を締結した。本サービスは、テーマを入力するだけで市場調査や競合分析、戦略立案の示唆を自動生成し、その後の専門家インタビューまでをシームレスに接続する設計となる。
背景には、生成AIの普及により情報収集や初期分析の効率が大幅に向上した一方で、情報の均質化が進み、意思決定の差別化が難しくなっている現状がある。特に新規事業や市場参入の検討では、「何が分からないか分からない」という構造的な課題が障壁となってきた。
博報堂は、生活者発想とAIを掛け合わせた意思決定の構造化ノウハウを持ち、AI商談シミュレーションやバーチャル生活者などの開発実績を積み上げてきた。一方、ビザスクは80万人超の専門家ネットワークを基盤に、年間約12万件のマッチング実績を有する。両社の強みを統合することで、AIによる初期分析とリアルな専門家の知見を有機的に結び付ける新たな意思決定支援モデルの確立を目指す。
意思決定高速化と依存リスクの分岐点
本取り組みは、企業の意思決定プロセスを構造的に変える可能性がある。AIが初期仮説を生成し、そのまま適切な専門家へ接続することで、従来分断されていた分析と実行の工程が一体化され、意思決定のスピードと精度が向上する可能性がある。
特にBtoB領域では、業界特有の前提知識の不足が参入障壁となってきたが、AIが暗黙知を補完することで新規参入のハードルが下がる可能性がある。これは新規事業開発の民主化を後押しする一因となり得る。
一方で、専門家の思考を学習するAIは、その前提となるデータやバイアスに影響されやすい。誤った前提が組み込まれた場合、意思決定全体に歪みが生じるリスクがあるほか、AIの示唆に依存することで企業内部の思考力が低下する懸念も否定できない。
今後は、AIと人間の役割分担の設計が競争力に影響を与える重要な論点になると考えられる。AIを意思決定の代替ではなく拡張として位置付け、最終判断を人間が担う構造を維持できるかが、この領域における成否を左右する可能性がある。
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