サンロフトがNFTチケット「ハコパス」運用開始 地域ライブの体験価値と収益構造が変わる

静岡県のIT企業サンロフトがNFTチケットアプリ「ハコパス」の運用を国内で開始した。同日開催の牧野憲人さんのリリース記念ライブで初採用され、地域イベントでのデジタル活用が広がる契機となる。
NFTで来場証明を残せる「ハコパス」が正式稼働
2025年12月6日、株式会社サンロフトは、ライブや地域イベント向けにNFT(※)技術を組み込んだチケットアプリ「ハコパス」を公開した。
NFTはデジタル上で唯一性を証明できる特性があり、チケットの偽造防止や履歴管理との親和性が高いとされる。サンロフトはその点に着目し、来場記録を「デジタルの証」として保存できる仕組みを実装した。
また、近年は転売対策の強化によりチケット譲渡が制限されるケースが増えていることから、正規の履歴をNFTで保持し、安全に取引できる譲渡機能も追加される予定だ。
開発背景には、推し活を中心とした「イベント後も思い出を残したい」という需要の高まりがある。従来の紙チケットや一般的な電子チケットでは、イベント終了後にアーティストとの関係性を維持する仕組みが限定的であった。
この課題を踏まえ、誰でも利用しやすいUIを採用し、小規模なライブハウスでも導入可能なシステムとして設計したことが特徴になる。
第一弾の活用例として、12月6日、焼津市を拠点に活動する牧野憲人さんの2nd Singleリリース記念ライブに採用された。地域密着型のアーティストである牧野さんの公演は、来場証明を記念として残すニーズとの相性がよく、アプリの価値を試す場として適していると言える。
サンロフトは今後、グループ会社であるニューイングやAUSPEXと連携し、投げ銭機能や参加者限定コンテンツなどを段階的に追加する計画だ。これにより、主催者は収益手段を多角化でき、アーティスト側もイベント後のコミュニケーションを継続しやすくなり、ファンの体験価値も広がるとみられる。
※NFT(非代替性トークン):デジタルデータの唯一性をブロックチェーン上で証明する技術。チケットやアート作品などの真正性確認に利用される。
地域ライブの収益化とファン体験をどう拡張するか
NFTチケット「ハコパス」の導入は、地域ライブの体験価値と収益構造に新しい回路をもたらす取り組みと捉えられる。
最大のメリットは、来場証明をデジタル資産として残せる点にある。従来の紙チケットとは異なり、NFTは改ざんされにくく、所有履歴を正確に保持できるため、イベントとの“つながり”を長期的に保つ手段として機能するだろう。
一方で、NFTを扱うユーザー体験には依然として壁が残る。
NFTは一般ユーザーにとって依然として理解しづらい概念であり、チケット譲渡やウォレット管理といった操作が障壁になる可能性がある。アプリ内でウォレット生成を完結させている点は工夫として評価できるが、それでも操作感に違和感を覚える利用者は一定数出るだろう。
将来的には、アーティストの成長や地域イベントの規模拡大に合わせて、ポイント制度、コミュニティパス、継続サブスクリプションなど、より多層的なデジタル体験が組み込まれていくのではないだろうか。そうした展開が実装されれば、ローカルエンタメの価値が大きく拡張される可能性を秘めていると考えられる。
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