生成AI悪用でeSIM契約を自動化 楽天モバイルに不正接続の16歳少年ら再逮捕

2025年11月11日、兵庫県警は携帯大手「楽天モバイル」のシステムに不正接続し通信回線を契約したとして、2人を不正アクセス禁止法違反容疑などで再逮捕した。うち16歳の少年は「生成AI(人工知能)を使って自動で回線を契約できるプログラムを作った」と供述している。
生成AIでeSIMを自動契約 楽天モバイルに不正接続
兵庫県警によると、少年と他容疑者は2024年春、他人の楽天IDとパスワードを用いて楽天モバイルのシステムにログインし、通信に必要な「eSIM(※)」を計10回線契約した疑いが持たれている。
県警は、今年10月に同様の手口による不正アクセス禁止法違反容疑で2人を逮捕。押収された少年のパソコンからは、自動で回線を契約できるプログラムや、約150万件の他人のID・パスワードデータが発見された。
少年は当初、手入力で不正契約を繰り返していたが、秘匿性が高い通信アプリ「テレグラム」で入手した情報をもとに、対話型AI「ChatGPT」を悪用して自動入力を行うプログラムを構築。入手したIDとパスワードは「海外のサイトで約50ドルで購入した」と供述している。
他容疑者とはSNS上で知り合い、少年が取得した不正回線を1件あたり約1000円で売却していたという。
当時、楽天モバイルでは本人確認済みのIDを使えば最大15回線まで追加契約が可能で、書類再提出の必要がなかった。
また、同様の事例として警視庁は2月以降、生成AIで自作したプログラムを悪用し、楽天モバイルのシステムに不正接続して契約したとして、3つの少年グループを摘発している。
※eSIM:スマートフォンなどの端末内部に直接埋め込まれた電子的なSIM。物理カードを差し替えずに通信契約を行える仕組み。
生成AIの「悪用フェーズ」突入 対策急務も防御は難航
生成AIの急速な普及は、プログラミングや業務効率化を民主化したという点で大きなメリットをもたらしている。
これまで専門知識を必要とした自動化やシステム開発が、一般ユーザーでも容易に実現可能となり、社会全体の生産性を押し上げる効果があったことは否定できない。教育・研究・産業など多様な分野で、生成AIは「知的補助装置」として新たな価値を生み出してきた。
しかし今回の事件が示すように、その手軽さは同時に「不正の自動化」という負の側面を生んでいる。特に、AIが自然言語からコードを生成できる特性は、倫理意識や法知識の乏しい若年層にも強力な攻撃力を与えてしまう。
かつてハッカーコミュニティ内で共有されていた不正手法が、いまやAIを介して個人レベルで再現可能になった点は極めて深刻である。
また、楽天モバイル側のように、利便性を重視した運用設計が結果的に不正の温床となるケースも浮き彫りになった。通信業界全体で、AI時代に適応した不正検知体制の強化が急務と言える。
生成AIは、社会に新たな効率をもたらす一方で、犯罪の自動化を招く両刃の剣である。
今後は、この技術を制御しながら活かす段階に社会全体が踏み出せるかどうかが問われるだろう。
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