ソフトバンク、“ワイモバイル”に自律思考型生成AIを導入 音声応対で照会業務を自動化

2025年11月7日、ソフトバンク株式会社は“ワイモバイル”のカスタマーサポートに自律思考型の生成AIを8月下旬から導入していることを発表した。暗証番号の照会業務を音声で自動対応できるようにし、応対品質の均質化とコールセンター業務の効率化を実現した。
音声対応AIが発話の意図を理解し自律応対を実現
ソフトバンクは、“ワイモバイル”のカスタマーサポートに音声対応の自律思考型AI(※)プラットフォームを導入した。
AIが顧客の発話内容を文脈や感情の流れまで解析し、質問の意図を多面的に理解した上で最適な回答を導き出す。これにより、従来はオペレーターが行っていた暗証番号の照会や確認手続きの一部が自動化され、待ち時間の短縮と応対品質の均質化が進んだ。
このAIは大規模言語モデル(LLM)とソフトバンク自社開発の知識推論エンジンを組み合わせた構成を採用している。これにより、複雑な条件分岐や非定型な質問にも柔軟に対応できるようになった。
さらに、顧客が複数の要件を同時に伝えた場合でも、AIが会話の流れを整理しつつ適切に応答できる点が特徴である。
ソフトバンクは2019年からコールセンター業務にAIを導入しており、2024年3月からは日本マイクロソフトとの共同開発に取り組んできた。その成果として、2025年2月に高精度な回答案を数秒で提示する生成AI・RAG技術の回答支援チャットを導入している。
さらに今回、音声に対応した自動応答を実現し、問い合わせ内容の深掘りや複数質問への対応など、人間らしい応対が可能になった。
また、今回の導入で得た知見は、ソフトバンクグループのGen-AX株式会社が開発を進める自律型AI「X-Ghost(クロスゴースト)」にも応用される予定だ。2025年度中の正式提供を目指す。
ソフトバンクは今後、全てのコールセンター窓口の自動化を推進し、より複雑な問い合わせにも対応できるよう自律思考型AIの開発を加速させる方針を示している。
※自律思考型AI:大規模言語モデル(LLM)を基盤とし、発話の意図や文脈を自己判断して応答を生成するAI。単なる定型処理に留まらず、対話の流れに基づき柔軟に質問や提案を行う点が特徴。
生成AIが支える次世代顧客体験 完全自動化への布石
ソフトバンクが“ワイモバイル”に導入した自律思考型生成AIは、音声応対の自動化によって顧客サービスの効率を大幅に高める可能性を持つ。
顧客の発話を文脈・感情レベルで理解する仕組みは、従来の定型応答型AIに比べ、より人間らしい自然な会話を実現する点で画期的だ。オペレーターの負担も減り、人的リソースをより付加価値の高い業務に振り向けられることは明確な利点といえる。
一方で、AIの自律応対にはリスクも存在する。
誤認識や意図の取り違えが発生した場合、顧客満足度を損なう恐れがある。そのため、AIによる応答ログを分析し、精度向上とリスク軽減を同時に進めていくことが重要となるだろう。
自律思考型AIの普及は、単なる業務効率化にとどまらず、顧客との関係を「理解と提案」に基づく新しい次元へと進化させる可能性を持つ。
今後は、AIが人間の理解力を補完し、企業と顧客の関係を再定義する新たな顧客体験が形成されていくと予想される。
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