フェラーリ、デジタル上でのみ存在する“バーチャル・フェラーリ”をNFT化 ル・マン伝説を再構築

2025年10月25日、伊フェラーリはブランド史上初となるデジタル専用ハイパーカー『F76』をNFTとして発表した。
ル・マン24時間レース3連覇を記念した本作は、生成デザインとAI技術を融合させた実験的モデルで、フェラーリのデザイン哲学をデジタル領域へ拡張する試みである。
フェラーリ、ル・マン優勝記念NFT『F76』を発表 生成デザインで空力を最適化
フェラーリは同社初の、デジタル上のハイパーカー『F76』を発表した。これは実車ではなく、デジタル上でのみ存在する“バーチャル・フェラーリ”として制作されたものだ。
名称の「76」は、1949年に同社がル・マン24時間で初優勝を果たしてから76年を記念するものである。
『F76』は限定プログラム「Hyperclub」の参加者向けに提供されるNFT資産で、所有者は生成アルゴリズムによって各自のF76をカスタマイズ可能となっている。
『F76』の設計はフェラーリ・デザインセンターのフラビオ・マンゾーニ率いるチームが担当し、自然界の形態や構造を模倣するバイオミメティクスや材料配置を数理的に最適化するトポロジー最適化などの最先端設計手法が導入された。
さらに、1970〜80年代のフェラーリ車を彷彿とさせるリトラクタブルヘッドライトを採用し、伝統と革新の融合を図った。
内部は2つの独立コクピットを搭載し、ドライブ・バイ・ワイヤ技術によって操舵・加速・制動を同期。乗員がリアルタイムで走行感覚を共有できる設計となっている。
フェラーリは、この作品を通じてデジタル領域でも「情熱とパフォーマンスの象徴」を具現化することを目指す。
NFT化がもたらす新たなブランド戦略
『F76』のNFT化は、フェラーリがデジタル所有体験を戦略的資産と位置づけたことを示している。
最大のメリットは、所有者が物理的制約なしに個別仕様の車両を創造できる点にあると考えられる。ブランド参加型の体験価値を高められるだろう。
こうした生成デザインの導入は、今後の車両開発においても設計効率や創造性を高める可能性がある。
一方で、デジタル資産としてのNFTは市場価格の変動が激しく、価値の安定性に課題を残す。
希少性をブランド戦略に取り込む手法は成功すれば高い収益をもたらすが、過度な投機的要素が入ることでブランドの持続的価値が損なわれる懸念もある。
それでも、フェラーリのような象徴的ブランドがNFTを活用する意義は大きい。
物理的資産とデジタル所有が融合する時代において、F76は次世代のデザイン体験を提供している。
単なるデジタル化ではなく、ブランド価値の再構築に挑むプロジェクトと言える。
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