アスクル、従来通りの出荷再開は12月以降に ランサムウェア被害から段階的復旧へ

2025年11月6日、アスクル株式会社はランサムウェア攻撃によるシステム障害の復旧状況を公表した。
現在、出荷能力は従来の1〜2割にとどまり、通常出荷の再開は12月上旬以降になる見通しである。
アスクル、11月中に全国7拠点で出荷再開へ 通常稼働は12月上旬以降
アスクルは10月19日に発生したランサムウェア攻撃によるシステム障害について、第6報を発表した。今回の報告では、出荷再開に向けた段階的な復旧計画を明示している。
第1弾では、10月29日から一部の法人顧客を対象にFAX注文による出荷トライアルを開始し、コピー用紙やトイレットペーパーなど37品目を提供している。
11月12日からは対象商品を237アイテムに拡大し、出荷拠点も新木場・大阪に加えて仙台、横浜、名古屋、関西、福岡を含む計7拠点へと広げる。
これにより、従来比で1〜2割程度の出荷能力を確保する見込みだ。
第2弾では、11月中にWeb注文の再開を予定しており、医療機器や衛生材料など約470品目の単品出荷も対象に加える。
出荷体制は依然、倉庫管理システムを使用しない運用になるが、安全性を確認しながら段階的な回復を図るとしている。
また、消費者向けの「LOHACO」は、出荷トライアルの対象外であり、再開時期は未定となる。
印刷サービス「パプリ」についても、全面再開時期は未定なものの、11 月中旬より一部のユーザーを対象にFAXでの注文を開始予定で、 対象ユーザーには個別に案内が送られるという。
法人向けサービス「SOLOEL」は通常稼働を維持しているが、サプライヤーとしてのアスクル自身の出荷機能は停止中だ。
本格的な復旧は12月上旬以降で、公式Webサイト経由での通常出荷を順次再開し、単品注文や物流センター在庫全商品の出荷を再開する見通しを示した。
復旧の先に問われる信頼とリスク分散 中小企業への波及も
今回のシステム障害は、企業の物流やサプライチェーン全体が抱えるサイバーリスクを浮き彫りにした。
アスクルのようにBtoB取引の基盤を担う企業の停止が、取引先の業務にも波及する「二次障害」を引き起こすことが懸念される。
一方で、同社が段階的に出荷を再開し、医療機関・介護施設など社会インフラ関連顧客を優先した対応を取っている点は、社会的影響を抑える対応として評価できるだろう。
安全性を重視した復旧プロセスは短期的には効率を損なうが、長期的な顧客信頼の維持に資すると見られる。
今後は、WMS(倉庫管理システム)やネットワーク分離など、インフラの再設計と多層防御が焦点になるだろう。
アスクルは「安全性と安定稼働を確認」しつつ段階的に復旧を進めているというが、被害の教訓をどう経営とシステムに反映させるかが、同社の信頼回復の鍵を握るだろう。
今回の事例は、他社にもリスク分散とセキュリティ投資の必要性を強く意識させる契機となりそうだ。
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