香港がデジタル資産規制を緩和 グローバル流動性とトークン化実験を推進

2025年11月3日、香港政府はデジタル資産市場の活性化を目的に規制を緩和し、トークン化のパイロット制度を導入すると発表した。世界的な資金流動性を取り込みつつ、フィンテック・ハブとしての競争力強化を図る方針である。
香港、デジタル資産の取引制限を緩和しトークン化試験制度を導入
香港証券先物委員会(SFC)は、現地認可の仮想資産取引プラットフォーム(VATP)が海外の関連会社とオーダーブックを共有できるよう規制を緩和すると明らかにした。
従来、香港内でのリングフェンス(※)が義務付けられていたが、今回の措置によりグローバルな流動性を活用する余地が広がった。
加えて、VATPは運用実績が12カ月未満の暗号資産や香港で認可されたステーブルコインをプロ投資家に販売できるようになる。これは、従来の1年運用実績要件を撤廃するものであり、より多様なトークン取引を可能にする方向性を示している。
香港金融管理局(HKMA)は同日、「フィンテック2030」ロードマップを公表し、AI・データ活用・レジリエンス・トークン化を柱とする中長期戦略を掲げた。
具体的には、サンドボックス「エンサンブル(Ensemble)」を活用し、トークン化預金やデジタル資産による実価値(リアルバリュー)取引を試行する計画だ。
HKMAのエディ・ユエ総裁は、まずトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)を対象とした実証を開始すると述べ、今後3年間で年間総額1,000億香港ドル超のテクノロジー投資を実施する見通しを示した。
すでに香港ドル建て・米ドル建てのトークン化MMFが相次いで立ち上がっており、主要銀行もデジタル資産市場への参入を強めている。
※リングフェンス:資産や取引を特定の地域・法域内に限定して管理する仕組み。
競争力強化の追い風も 市場の成熟度とリスク管理が焦点に
今回の規制緩和は、香港がグローバルなデジタル資産市場で主導的地位を取り戻すための一手とみられる。グローバルな流動性を取り込むことで市場の厚みが増し、投資家や金融機関にとって取引機会の拡大が期待される。
金融機関にとっては、トークン化MMFやトークン化預金といった新たな資産クラスへの参入が促される点が大きなメリットである。従来の証券や預金よりも柔軟で即時性の高い運用が可能となり、資金効率の改善につながると予想される。
しかし、急速な制度緩和は市場参加者の熟度とのギャップを生むリスクも孕む。実証段階での技術的課題や法的整備の遅れが顕在化すれば、信頼性を損ねる恐れもありそうだ。
海外取引所との連携による透明性確保やマネーロンダリング対策の強化も不可欠になると考えられる。特に、ステーブルコインの安定性やデジタル資産の価格変動リスクは引き続き注意が必要だ。
今後、香港が示すトークン化実験の成果が国際金融界にどのような波及をもたらすかが焦点となるだろう。制度運用と技術基盤の両面で信頼を確立できれば、アジア地域におけるWeb3金融の中心地としての存在感を一段と高める可能性がある。
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