渋谷の観光案内所が対話型AI導入 訪日客対応を自動化、多言語サービスを強化

2025年10月27日、AIソリューション事業を展開するNextremerは、東急および渋谷区観光協会と共同で、対話型AI(※)「AIミナライ」を活用した観光案内の実証実験を開始した。訪日外国人旅行者への多言語対応と案内業務の効率化を目的とした取り組みである。
渋谷の観光案内所がAIで多言語対応、案内の効率化と品質均一化を狙う
実証実験は、渋谷駅前の観光案内所「SHIBU HACHI BOX」と「WANDER COMPASS SHIBUYA」で実施される。訪日外国人旅行者は、掲出されたQRコードから「AIミナライ」にアクセスし、スマートフォン上で駅や観光スポット、周辺施設の案内を受けることができる。
対応言語は日本語・英語・簡体字・繁体字・韓国語の5言語。AIが自然な対話形式で応答し、時間帯や担当者による対応差を解消する。渋谷区では、訪日客の急増により多言語対応の人材確保や教育負担が課題となっており、今回の導入で定型的な案内を自動化し、スタッフがより付加価値の高い接客に集中できる環境づくりを支援する。
取得した対話データは匿名化・統計化したうえで分析され、案内の精度向上や運用改善に活用される。
※対話型AI(※):人間の自然な会話を模倣し、質問への回答や情報提供を自動で行うAIシステム。音声やテキストを通じてリアルタイムに応答する仕組みを持つ。
AIが変える観光接客のかたち 効率化の先に問われる「人の価値」
対話型AIの導入は、多言語対応や業務効率化を大きく高める一方で、観光現場の在り方を見直す契機となる可能性がある。
人材不足や業務の属人化といった課題をAIが補完できれば、案内品質の均一化とコスト削減の両立が期待される。地方自治体にとっても、AIによる自動対応モデルは展開しやすく、観光DX(デジタル変革)の実装事例として全国に広がる可能性がある。
しかし、AI導入には課題も残る。観光案内は単なる情報提供にとどまらず、「人との交流」や「温かみ」も重要な要素である。AIの受け答えが形式的に感じられれば、旅行者の満足度が低下するリスクも否定できない。そのため、AIが担当するのは定型的・事務的な質問に留め、接客の本質である“人とのふれあい”をスタッフが担う役割分担が求められると考えられる。
NextremerはAIを「人を置き換える技術」ではなく「人を支える技術」として位置づけている。今後、AIが地域情報を継続的に学び、案内精度と体験価値の両立を実現できれば、渋谷発の観光DXモデルが他地域に波及する可能性もある。
効率と人間味の共存を模索する取り組みが、次世代の観光現場の方向性を左右することになるだろう。
関連記事:
「対話型AIロボット」が展示を案内 GMO系が日本科学未来館で実証開始

板橋区、DX加速で「CAT.AI」導入 対話型AIが区民サービスを革新












