LIXIL、AIでトイレ改修を効率化 トヨタ自動車元町工場で実証プロジェクトを実施

2025年10月28日、LIXILはトヨタ自動車元町工場(愛知県豊田市)におけるAIを活用したトイレ改修の実証プロジェクトの実施を公表した。センサーによる混雑可視化とAIシミュレーションで、従業員の快適性と作業効率の両立を目指した取り組みである。
LIXILとトヨタ、AIで職場トイレの改修効率化を検証
LIXILは、トヨタ自動車元町工場において、AI技術を活用したトイレ改修の実証プロジェクトを2024年11月から2025年1月にかけて実施した。
老朽化した工場施設の改善を進めるトヨタの方針に基づき、「人への投資による職場環境改善」の一環として行われたものである。
今回LIXILが導入したのは、AI処理機能を備えたビジョンセンサー「IMX500」と、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS™」を用いたセンシング技術だ。どちらもソニーセミコンダクタソリューションズ製である。
これにより、トイレの利用状況や混雑時間帯を可視化し、従業員の動線や作業スケジュールとの相関をデータとして取得した。
さらに、LIXIL独自の「A-SPEC混雑予測シミュレーション」を活用し、得られたデータを基に最適な衛生器具数や配置計画を検討した。
これまで一般施設向け基準を参考にしていた設計手法から脱却し、工場特有の勤務リズムに即した改修案を導き出した点が特徴である。
トヨタ側の担当者は、今回の分析により「根拠をもって利用者に快適な職場環境を提供できる計画ができることは大変有意義に感じています」とコメントした。
LIXILは、数値に基づく空間設計の有効性を確認し、今後のトイレ改修事業への適用拡大を見据えている。
AIが変える公共空間設計 効率性と人間中心設計の両立へ
今回の実証は、AIによる空間設計支援が、製造業など従来アナログ設計に依存していた領域に実用的な変化をもたらす好例といえる。
利用データを定量的に解析することで、従業員の行動パターンに沿った環境設計が可能になり、従来の経験則に頼る改修計画からの脱却を促している。
メリットとして、AIによる数値的根拠は改修効果を客観的に示し、主観に依存せず科学的な意思決定を可能にする点が挙げられる。
また、トイレのようにプライバシー配慮が求められる空間でも、非画像データを活用したセンシング技術により安心して利用実態を分析できる。
一方で、AI分析のためのデータ収集にはコストや技術的知見が必要であり、すべての施設で即時に導入できるわけではない。さらに、AIの判断結果をどの範囲まで設計に反映させるかという運用上の課題も残る。
今後は、AIが設計者を支援する「共創ツール」として定着していく可能性が高い。
LIXILの「A-SPEC Pro」シリーズが示したように、AIを活用した環境改善は建築や製造業の枠を超え、学校や商業施設、自治体インフラなど幅広い分野で応用が進むと考えられる。
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