DNPと横浜市立大、「アニメ療法」実証実験を開始 キャラクターで心を癒やす新アプローチ

2025年10月30日、公立大学法人横浜市立大学と大日本印刷(DNP)は、キャラクターを介して若者の心のケアを行う「アニメ療法」の実証実験を開始したことを発表した。
オンラインカウンセリング形式で、アニメが持つ没入効果を心理療法に応用する試みである。
若者の生きづらさに「アニメ療法」 DNPと横浜市立大が実証実験
横浜市立大学COI-NEXT拠点「Minds1020Lab」と大日本印刷は、アニメ作品への没入を活用した心理療法「アニメ療法」の実証実験を開始した。
実験は2025年10月1日から開始している。
対象は18〜29歳の成人20名で、2026年6月まで継続される。実験では、心理士が自身のアバターであるキャラクターを介してオンラインカウンセリングを実施する。
参加者は6種類のオリジナルキャラクターの中から1体を選択して、カウンセリング前後に心理指標を測定し、効果を科学的に検証する方針だ。
「アニメ療法」は、アニメ作品への感情移入や没入体験を通じて精神的治癒を促す手法だ。提唱者のパントー・フランチェスコ氏は、「フィクションの要素を持ちながら、人間の葛藤、身体的、関係的、社会的苦悩をリアルに描く作品の鑑賞を通じて、精神の治癒効果を狙う療法」と述べている。
DNPは2023年に同氏を招いた社内セミナーを契機に社会実装を検討し、2024年3月に横浜市立大学の研究拠点に参画。本実験ではキャラクターデザインやカウンセリングシステムの開発を担当した。
両者は、若者の心理的レジリエンス(回復力)を高める「社会的処方」の一環として、この新手法の有効性を評価する方針だ。
アニメ×心理支援が切り拓く新領域 社会実装への課題と期待
アニメ療法は、従来のカウンセリングでは届きにくい層へのアプローチを可能にする点で注目されている。
対面やテキストによる対話に抵抗を持つ若者にとって、キャラクターを介したオンライン環境は安全かつ柔軟な対話の場を提供する。
アニメ文化への親和性が高い日本では、心理的ハードルを下げる効果が期待できるだろう。
一方で、キャラクター依存や現実逃避などの副作用も懸念される。
心理的支援としての実効性を確保するには、専門家の監修や長期的な追跡研究が不可欠だろう。
医療と文化を橋渡しするこの試みは、孤独やメンタル不調が社会課題化する現代において、新しいケアモデルとなる可能性がある。
今後は自治体や企業メンタル支援など、幅広い領域での応用も見込まれる。
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