メタマスク、EVMと非EVMを統合管理へ マルチチェーン・アカウント正式導入

2025年10月29日、Web3ウォレットのメタマスク(MetaMask)は、複数のブロックチェーンを1つのアカウントで管理できる新機能「マルチチェーン・アカウント(Multichain Accounts)」を正式導入したと発表した。
これにより、EVM(イーサリアム仮想マシン)対応チェーンと非EVMチェーンを統合管理できるようになる。
複数ネットワークを単一アカウントで統合管理可能に
メタマスクは公式ブログで、マルチチェーン・アカウント機能をグローバルに展開したことを明らかにした。
今回のアップデートにより、イーサリアム(Ethereum)をはじめとするEVM対応ネットワークと、ソラナ(Solana)などの非EVMネットワークを、同一アカウント内で扱うことが可能となる。
従来のメタマスクでは、ネットワークごとに異なるアドレスを管理する必要があり、EVMと非EVMの資産を一括で閲覧できなかったため、ユーザー体験の分断や操作の煩雑さを生んでいた。
しかし、新機能の導入により1つのウォレット画面上で複数チェーンの資産を一覧し、操作を横断的に行えるようになった。
現在、対応済みのネットワークにはイーサリアム、リネア(Linea)、アービトラム(Arbitrum)、ベース(Base)、ソラナが含まれる。さらに、今後はビットコイン(Bitcoin)やトロン(Tron)、モナド(Monad)などへの拡張も予定しているという。
同社は今回の発表で、マルチチェーン・アカウントの導入により複数ネットワーク間の資産管理がよりシームレスかつ安全になる、と強調している。
なお、現時点ではハードウェアウォレットの対応はEVMチェーンに限定されており、ソラナアドレスのグループ化は今後の対応が検討されている。
※EVM(イーサリアム仮想マシン):イーサリアム互換のスマートコントラクト実行環境。多くのブロックチェーンで標準仕様として採用されている。
シームレス化進む資産管理 利便性向上の裏でリスク集約が課題に
メタマスクのマルチチェーン・アカウント導入は、Web3ウォレットの利便性を一段階引き上げる画期的な試みと言える。
従来のEVMと非EVMという断絶を越え、複数のネットワークを単一アカウントで扱えるようになった点は、ユーザー体験の統合に直結し得る。特に、異なるブロックチェーンを横断して資産を運用するトレーダーや開発者にとって、切り替えの手間が減ることは大きな利点だろう。
一方で、利便性の向上は新たなリスクの集約でもある。
複数ネットワークの鍵管理が同一アカウントに統合されることで、攻撃対象が広がる懸念は否めない。とくに非EVMチェーンは仕様やセキュリティ設計が異なり、統合時の脆弱性を突かれるリスクも考慮する必要がある。
また、ウォレット構造の複雑化に伴い、ユーザーが仕組みを十分に理解しないまま操作するリスクも増すことが懸念される。
マルチチェーン管理の進化はWeb3エコシステムの成熟を象徴するが、各チェーンの仕様差によるトランザクションリスクをいかに吸収するかが次の焦点となるだろう。
メタマスクがこの課題を乗り越えられるかが、次世代ウォレット競争における真価が問われるポイントとなりそうだ。
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