Secured Finance、「JPYC」対応の新機能群を発表 固定金利レンディングや自動決済など展開

2025年10月28日、スイスのSecured Finance AGは、日本円ステーブルコイン「JPYC」エコシステムを活用した複数の新プロダクトを発表した。
固定金利レンディングや担保付き借入、自動決済などを通じ、円建てのオンチェーン金融市場の形成を目指す。
JPYC建てレンディングや自動決済を段階的に展開
Secured Finance AGは、JPYCのローンチにあわせ、日本円建ての分散型金融(DeFi)サービス群を公開した。
主軸となるのは「JPYC固定金利レンディング」であり、貸し手は安定利回りを得られ、借り手は固定金利で資金調達できる仕組みを提供する。
初回板寄せは2025年11月3日に実施予定で、初期満期は同年12月26日と2026年3月27日に設定された。以降は四半期ごとに市場を拡大する方針だ。
また、WBTCおよびETHを担保にJPYCを借り入れることが可能となる。
将来的には、実世界資産トークンや利回り資産トークンを担保対象に加える計画も示された。
これにより、ブロックチェーン上での信用市場の基盤を形成することを狙う。
さらに、同社はYearn Financeと連携し、「JPYC Vault v3」を開発中だ。
固定金利オーダーブックへの自動マーケットメイキングやデルタニュートラル戦略など、分散的アルゴリズムによる自動運用を想定している。
加えて、Coinbaseが提唱する「x402プロトコル」を活用し、JPYCを用いたコードベースでの自動決済機能を導入する。
HTTPレスポンス「402 Payment Required」を再定義することで、オンラインサービスやAIエージェントがJPYCによる即時決済を実現できる仕組みを構築している。
日本円DeFiの基盤化がもたらす新たな金融構造
Secured Financeの新機能群は、日本円ステーブルコインを軸とするオンチェーン経済圏の確立に向けた実証的な試みと言える。
固定金利市場の導入により、これまでドルやユーロ中心だったDeFiレンディング市場に日本円金利カーブが形成されれば、国内外の投資家が円建て利回りに直接アクセスできるようになるだろう。
この動きは、為替リスク分散やグローバル資金循環の観点からも意義がある一方、初期段階では流動性の薄さや市場参加者の偏りが課題となりそうだ。
円建て市場の信頼性を確立するには、一定の取引量と継続的な金利データの蓄積が不可欠となる。
また、x402を活用した自動決済の導入は、AIエージェントやウェブサービス間の取引を即時化する新たな決済基盤として期待されるが、セキュリティおよび規制適合性の面での検証も必要となるはずだ。
JPYCを中心とするオンチェーン円金利指標が確立すれば、日本の金融機関や企業にとっても新たな資金調達・運用の選択肢となる可能性がある。
DeFiと実金融を橋渡しするSecured Financeの動向は、今後の「オンチェーン円経済」の試金石となるだろう。
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