IBM、金融機関向けデジタル資産運用基盤を発表 複数ブロックチェーン対応

2025年10月27日、米IBMは金融機関や機関投資家向けにデジタル資産運用プラットフォーム「Digital Asset Haven」を発表した。
ブロックチェーン資産の保管・取引・鍵管理を一元化し、企業のカストディ事業拡大を支援する狙いだ。
IBM、複数ブロックチェーン対応の統合プラットフォームを提供
IBMの「Digital Asset Haven」は、複数のブロックチェーン上で発行・保有・取引される資産を統合的に管理できる新しい基盤だ。
ウォレット生成からスマートコントラクト実行、鍵管理、承認プロセスまでを一括で支援することで、金融機関が抱える運用リスクと複雑なワークフローの分断を解消する。
サービスは段階的に展開され、SaaSおよびハイブリッドSaaS版が2025年第4四半期に、オンプレミス版が2026年第2四半期に提供開始予定となっている。
APIやSDKを通じて外部アプリケーションとの連携を可能にし、KYC(本人確認)やAML(マネーロンダリング対策)機能を標準搭載する。
セキュリティ面では、マルチパーティ計算(MPC)やハードウェア・セキュリティ・モジュール(HSM)に加え、IBM独自の機密性の高い「コンフィデンシャル・コンピューティング」技術を採用。
鍵生成や署名処理を運用担当者から分離することで、取引データの改ざんや漏えいを防ぐ構造を実現した。
金融インフラの標準化へ 信頼性強化と規制リスクの両立が焦点か
今回の発表は、シティグループやワンペイなど大手によるカストディ参入が相次ぐ中で、業界インフラを支える動きとして注目を集めるだろう。
特に、「Digital Asset Haven」は、金融機関にとって運用の効率化と規制順守の両立を支援する点で意義が大きい。
各国の監督機関は暗号資産の保管・送金に対する監視を強化しており、システム的な透明性とガバナンスが求められている。IBMのプラットフォームは、コンプライアンス対応とセキュリティ確保を同時に実現できる点で、企業のリスクマネジメント負担を軽減するだろう。
一方で、クラウド環境で資産を扱うことへの懸念も残る。特にデータ主権や暗号鍵の所在を巡る規制が国ごとに異なるため、グローバルな運用には課題が伴う。
IBMがオンプレミス対応を維持するのは、こうしたリスク分散の意図があると考えられる。
今後は、トークン化証券やCBDC(中央銀行デジタル通貨)など公的インフラとの接続も想定されるため、銀行・証券・フィンテックの境界を超えた統合的な資産管理の基盤として成長する可能性がある。
今回のIBMの動きは、デジタル金融インフラの標準化を促す契機となるだろう。
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