ANYCOLOR、にじさんじ誹謗中傷犯に和解条件として意識調査を実施 承諾の上公表へ

2025年10月22日、VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社は、所属ライバー「甲斐田晴」への誹謗中傷や危害予告を行った人物との民事訴訟において、裁判上の和解が成立したと発表した。
和解条件には、加害者への意識調査の実施が含まれており、誹謗中傷行為の抑止を目的とした措置となる。
ANYCOLOR、誹謗中傷加害者と和解 意識調査を実施・公表へ
ANYCOLORは10月22日、所属ライバーへの誹謗中傷や危害予告を行った加害者と裁判上の和解が成立したと発表した。
対象となったのは、2024年6月および12月にライバー「甲斐田晴」らを執拗に攻撃し、SNS上で荒らしやタグ荒らし、危害予告などを行っていた人物である。
当該人物は業務妨害罪で書類送検され、裁判所から罰金刑の判決を受けた。
その後、ANYCOLORは民事上の責任を追及し、損害賠償金の支払いおよび今後の関連投稿禁止などを条件に和解が成立した。
今回の和解では、異例の措置として、裁判上の和解条件に「意識調査の実施」が盛り込まれた。
また、ANYCOLORは、この意識調査の結果を誹謗中傷の抑止を目的に公表した。対象者の同意を得た上で、動機や心理背景、行為の結果に関する詳細が公開されている。
具体的には、対象者の20代後半の女性が、自らの動機や心理状態、行為に至った経緯について書面で回答している。
強い承認欲求やストレスによる精神的不安定さにより、行為の違法性を理解しながらも制止できなかったという。
同社は「誹謗中傷の再発防止と社会的理解の促進」を目的に、今後も対応を継続するとしている。
企業が示す“可視化による抑止”の一手 ネット倫理の転換点となるか
ANYCOLORが和解条件として加害者の意識調査を実施したことは、誹謗中傷対策の新たなアプローチとして注目される。
従来の対応は刑事告訴や損害賠償請求にとどまっていたが、今回のように「行為の背景を社会的に共有する」試みは、被害構造の可視化と予防的効果を狙ったものだろう。
この手法のメリットは、誹謗中傷を行う側の心理的メカニズムを明らかにし、他者への教育的啓発につなげられる点にあると考えられる。
SNS上で匿名性のもとに暴走する心理を「当事者の声」として公開することは、抑止力を高める有効な手段となりうる。
一方で、加害者個人の情報開示が新たな誹謗や私的制裁を誘発する懸念も残る。
企業がどの範囲まで個人の心理や行動を公表するかは、倫理的な慎重さが求められる領域だ。
それでも今回の取り組みは、エンタメ業界のみならず、社会全体で広がるネット中傷問題への新たな指針を提示した。
企業が単に法的措置を取るだけでなく、教育的・社会的責任として「ネットリテラシー向上」に関与していく動きは、今後のスタンダードとなる可能性がある。
関連記事:
総務省、「Pinterest」など4サービスを情プラ法指定 誹謗中傷対策で規制対象拡大へ












