ストライプ主導の新興L1「Tempo」が5億ドル調達 評価額50億ドルで決済インフラを刷新へ

2025年10月17日、米決済大手ストライプ(Stripe)が共同開発に関与する新レイヤー1ブロックチェーン「テンポ(Tempo)」が、シリーズAで5億ドル(約750億円)を調達したと米メディア「フォーチュン・クリプト(Fortune Crypto)」が報じた。
調達後の評価額は50億ドルに到達し、次世代決済インフラの台頭として注目を集めている。
Tempo、ストライプとVC主導で決済特化型ブロックチェーンを始動
シリーズAラウンドはグリーノークス(Greenoaks)とスライブ・キャピタル(Thrive Capital)が共同主導し、テンポの評価額は一気に50億ドルへと跳ね上がった。
テンポは暗号資産(仮想通貨)および決済領域を対象とした新しいレイヤー1(※1)ブロックチェーンである。ストライプと暗号資産VCのパラダイム(Paradigm)が共同インキュベートしており、国際送金やグローバルペイアウト、埋込型金融(Embedded Finance)、マイクロペイメントなどの利用を想定する。
特に注目されるのは、トークン化預金やAIエージェントによる自律的決済といったユースケースだ。これらの仕組みを組み合わせることで、企業やAIモデルが即時かつ安全に資金をやり取りできる新しい金融フレームワークの構築を目指す。
想定パートナーには、ドイツ銀行やショッピファイ、オープンエーアイ(OpenAI)、アンソロピック(Anthropic)など、実需を伴う大手企業が名を連ねている。
同日、イーサリアム財団の主要研究者で「ダンクシャーディング(Danksharding)」の共同設計者として知られるダンクラッド・ファイスト氏がテンポへの参画を発表。
イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、ファイスト氏のテンポへの移籍を支持した。一方で、「バンクレス(Bankless)」共同創設者デイビッド・ホフマン氏は「イーサリアムにとって痛手だ」と述べ、業界内では賛否が分かれている。
※1 レイヤー1:ブロックチェーンの基盤層。アプリやトークンが直接稼働する最も基本的なネットワークを指す。
AI決済時代の中核狙うTempo 成長の鍵は実需と互換性
テンポの最大の強みは、ストライプが長年培ってきた決済ネットワークのノウハウを基盤に持つ点にある。
既存金融機関との接続性と、オンチェーン上での即時決済を両立できれば、AIやIoTが自律的に支払いを行う「マシン・エコノミー(※2)」の実現に近づくと期待される。AIエージェントが自らクラウドリソースやAPI使用料を支払うようなモデルが現実化すれば、新しい経済圏の基盤となる可能性が高い。
一方で、課題も多い。レイヤー1市場はすでにイーサリアム、ソラナ、アプトスなどが覇権を競っており、テンポが差別化を維持するには高いスループットと開発者コミュニティの確立が不可欠だろう。
また、ストライプ主導という構造が「中央集権的運営」と受け止められれば、分散型技術を重んじる暗号資産コミュニティからの反発を招く可能性もある。
テンポに期待できるのは、AI時代の決済基盤という新しいカテゴリーの創出である。実現すれば、金融とAIがシームレスに連携し、企業だけでなくAIモデルやIoTデバイスが経済主体となる世界が到来するだろう。
ストライプが持つ決済基盤とWeb3のオープン性を融合できれば、テンポは「実用的ブロックチェーン時代」の幕開けを象徴する存在になると予想される。
※2 マシン・エコノミー:AIやIoT機器が自動的に契約・支払いを行い、経済活動を担う概念。ブロックチェーンを基盤とすることが多い。
関連記事:
レイヤー1ブロックチェーンの開発を支援するモナド財団、ステーブルコイン基盤のポータルを買収 高性能チェーンに決済機能を統合












