バイナンス、不正取引で600超のアカウント停止 Bot利用やAPI誤用を厳格排除へ

2025年10月21日、海外大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)が、ボットファーム(Bot farm)などの不正自動化ツールを利用した取引を理由に、600件を超えるアカウントを停止したと発表した。対象はトークン取引プラットフォーム「バイナンスアルファ(Binance Alpha)」上のアカウントで、同社は今後の監視体制をさらに強化する方針だ。
Bot利用やAPI誤用を検出 バイナンスが一斉停止措置
バイナンスの公式Xアカウント「バイナンスウォレット(Binance Wallet)」は、同社の内部調査により不正な自動取引行為を確認したと公表した。対象となったのは、同社が運営するトークン事前発見プラットフォーム「バイナンスアルファ」で、許可されていないボットやスクリプト、API(※)の誤用が行われていたという。
バイナンスは、停止したアカウントの不正取得資産に関して回収措置を実施したとしている。
同社はまた、ユーザーからの通報を奨励する新制度を導入予定であると明らかにした。今後は不正行為の報告に基づき、回収資産額の最大50%を報奨金として支払う仕組みを構築する。
この対応は、取引環境の健全化を最優先するバイナンスの姿勢を象徴するものであり、同社の利用規約第20条および第26条に基づく措置とみられる。いずれの条項でも、自動取引の乱用やアカウント共有を明確に禁止している。
※API:アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略。ソフトウェア同士を連携させる仕組みで、トレーディングボットなどが取引所と接続する際に利用される。
強化される不正防止網 透明性と信頼性向上の試金石に
今回のアカウント停止は、バイナンスがグローバルで進める「市場操作排除」戦略の一環とみられる。
2023年以降、同社は米・欧州当局の監視強化を受け、内部コンプライアンスと自動取引検知システムを段階的に更新してきた。今回の一斉停止は、その成果が可視化された象徴的な事例といえる。
また、今回の対応が他取引所にも波及することが考えられる。特に、ボットによる過剰なアルゴリズム取引は市場価格を歪めるリスクが高く、同様の摘発や停止措置が他の主要取引所でも強化される可能性がある。
一方で、バイナンスが導入を予定する「通報報奨制度」は、ユーザーコミュニティを活用した新たな監視モデルとして注目できる。
報奨金という経済的インセンティブは不正検知の即時性を高める反面、虚偽通報のリスクも孕む。運用ルールや透明性の確保が不十分であれば、制度自体が混乱を招く懸念もある。
それでもなお、今回の対応はバイナンスが「信頼回復」を最優先課題とする姿勢を明確に示すものだ。取引の公平性を担保し、長期的な市場の信頼性向上へとつなげられるかが今後の焦点になるだろう。
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