NTT、既存光ファイバーで地下空洞を高頻度モニタリング

2025年10月21日、NTTと産業技術総合研究所は、既存の通信光ファイバーを活用した地下空洞推定技術の実証結果を発表した。市街地での実証により、道路陥没リスクの早期発見に向けた新たなインフラ監視手法の有効性が確認された。
光ファイバーセンシングで地中3~30mの空洞を遠隔監視
今回の実証では、既存の地下管路に敷設された光ファイバーをセンサとして活用し、常時微動を測定することで地中深さ約3~30mの地盤特性を推定した。
従来の点検手法では数年に1回程度しか観測できなかったが、光ファイバーセンシング(DAS※)を用いることで、1日1回程度の高頻度観測が可能であることが示された。
市街地での実証では、茨城県つくば市と埼玉県草加市の複数地点で、NTTのDAS技術と産総研の微動アレイ探査の結果を比較。約3Hz~20Hzの振動周波数範囲で、両手法の位相速度解析が整合し、従来技術とほぼ同等の精度で地盤モニタリングが行えることが確認された。
さらに、空洞形成時の地盤特性の変化をシミュレーションし、経時的な振動解析から空洞化の予兆を推定できる可能性も示された。
この手法は、既存の約62万kmの地下光ファイバーを活用するため、広域かつ低コストでの監視が実現することになる。
NTTは本成果を11月に開催される「NTT R&D FORUM 2025」で展示する予定だ。
今後は自治体や上下水道事業者と連携し、2026年度中に実地での長期実証を進めるとともに、解析アルゴリズムと検知システムの高度化を図る計画を掲げている。
※光ファイバーセンシング(DAS):光ファイバーに伝わる微細な振動を高密度に検出し、連続的な観測データとして取得する技術。
都市防災のDXを後押し 低コスト化と制度設計が課題に
本技術の最大の利点は、既に全国に広がる通信光ファイバー網をそのまま活用できる点にある。
新たなセンサー設置や掘削工事が不要で、導入コストを抑えつつ都市部の広域監視を実現できる。自治体にとっては、老朽化したインフラの点検負担を軽減し、防災計画の高度化にもつながる可能性がある。
一方で、実運用にあたっては膨大なデータ処理が課題となる。
振動データには交通や工事などのノイズが含まれるため、AIによる自動解析や異常判定の最適化が欠かせない。リアルタイム解析を支える通信・クラウド基盤の整備も求められるだろう。
さらに、地盤情報を自治体間で共有するための法的・制度的枠組みも整える必要があるとみられる。
公共インフラの監視データをどの範囲まで開示し、災害対応にどう活用するかという議論の進展が、全国展開の成否を左右すると考えられる。
総じて、光ファイバーを「見えない地下のセンサー網」として活用する構想は、都市防災のDX(デジタルトランスフォーメーション)を象徴する取り組みといえる。
社会実装が進めば、陥没事故を未然に防ぐだけでなく、持続可能な都市インフラ維持の新たなモデルとなるだろう。











