三菱UFJモルガン・スタンレー証券、デジタル証券事業を始動 ASTOMOも同日公開

2025年10月14日、三菱UFJモルガン・スタンレー証券がデジタルアセット事業の開始を発表した。第1弾として、ブロックチェーン上で発行される債券セキュリティトークンの取り扱いを開始し、個人投資家向けST取引サービス「ASTOMO」を同日リリースした。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ST取引サービス「ASTOMO」開始
三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、国内大手証券として本格的にデジタルアセット(※1)事業へ参入した。
新サービス「ASTOMO」は、ブロックチェーンを基盤にしたセキュリティトークン(ST / デジタル証券)(※2)の取引を個人投資家向けに提供するもので、初期段階では不動産関連のSTを中心に取り扱う計画だ。
同サービスは、フィンテック企業スマートプラスが提供する証券ビジネス基盤「BaaS(バース:Brokerage as a Service)」を活用し、両社の共同運営により構築された。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が選定した不動産STを、スマートプラスが販売するスキームとなる。
これにより、同社は新たな投資商品を通じて、デジタル資産市場の拡大と個人投資家層の拡充を狙う。
さらに、BaaSは大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営するSTの二次流通市場「START」(2023年12月開設)と連携しており、セカンダリ市場への対応を実現している。
今回のASTOMO開始に合わせて、BaaSにはSTO(セキュリティトークンオファリング)機能と店頭取引機能が追加された。これにより、プライマリ市場からセカンダリ市場まで対応し、デジタル証券の発行から流通までを一貫して支援するとのことだ。
※1 デジタルアセット:ブロックチェーン技術を基盤とし、取引や管理が行われる資産。その透明性とセキュリティの高さから、金融市場や企業活動における市場規模が急速に拡大している。
※2 セキュリティトークン(ST):ブロックチェーン上で発行・管理されるデジタル化された有価証券。金融商品取引法では「電子記録移転有価証券表示権利等」として定義され、債券や不動産などの資産を裏付けに発行される。
金融のデジタル化が加速 証券取引の新常態を形成する可能性
ASTOMOの開始は、日本の証券市場におけるデジタル資産の普及を後押しする契機となるだろう。
これまで不動産や債券といった非流動性資産への投資は高額かつ手続きが煩雑だったが、STの導入により少額からの分散投資が現実的になった。これにより、個人投資家が参加しやすくなり、資本市場の裾野が広がる効果が期待できる。
一方で、課題も少なくない。
STはブロックチェーンという新しい技術基盤に依存しており、システム障害や不正アクセスなどのリスクが増大する。発行主体や取引プラットフォームが複数存在することで、監督当局によるガバナンスやルール整備も複雑化する可能性がある。
今回の三菱UFJモルガン・スタンレー証券による参入は、ST市場を実証段階から本格運用フェーズへと押し上げる契機になると考えられる。
今後、金融機関に求められるのは、単なるデジタル化の推進ではなく、リスク管理と透明性の確保を両立した市場設計だろう。
デジタル証券は、単なる実験段階を脱し、金融インフラの一部として定着するかどうかの転換期にある。
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