ケニア、デジタル資産規制法案「VASP法」可決 暗号資産市場の透明性強化へ

2025年10月13日、ケニア議会がデジタル資産を統制する新法「VASP法」を可決した。暗号資産(仮想通貨)市場の透明化と投資拡大を両立させる狙いがあり、大統領署名を経て施行される見通しだ。
ケニア、暗号資産業界に初の包括的ルールを導入へ
ケニア議会が可決した「バーチャル・アセット・サービス・プロバイダー(VASP)法案」は、暗号資産やステーブルコインなどを対象に、明確な監督体制を整備するものだ。
これまで同国ではデジタル資産の定義や免許制度が曖昧で、投資家保護や資金洗浄防止の観点から、不透明さが懸念材料となっていた。
今回の法整備により、アフリカ有数のフィンテック(※)市場を持つケニアが、国際的な金融ルールに接近する形となる。
法案によれば、ステーブルコインの発行権限は中央銀行が持ち、暗号資産取引所などの運営免許は資本市場当局が管轄する。金融セクターの分権的構造を活かしつつ、各機関が適切な監視を行う仕組みだ。
財務委員会委員長のクリア・キマニ(Kuria Kimani)氏は「期待される法的明確性により、バイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)などの暗号資産取引所を含むフィンテック分野への投資増加が見込まれる。」と強調した。
また、米国や英国の枠組みを参考にしたと述べている。
なお、同国ではすでに、携帯金融サービス「エムペサ(M-Pesa)」が数千万人に利用されており、デジタル決済基盤の普及が進んでいる。
※フィンテック:金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。決済、融資、資産運用などの分野で、AIやブロックチェーンなどの先端技術を活用して新しい金融サービスを提供する仕組み。
規制で信頼性向上も、資本流出と通貨防衛が課題か
ケニアが可決した「VASP法」は、暗号資産市場の混乱を防ぎ、投資家保護と透明性の向上を図る点で大きな意義を持つ。
これまで曖昧だった免許制度や定義を明文化することで、国際基準に沿った市場形成が進むだろう。
これにより、ケニアが「アフリカの金融ハブ」としての地位を確立するための土台が整ったと言える。
しかし、制度の整備が経済安定に直結するとは限らない。
ドル建てステーブルコインの利用拡大は、ケニアシリングの需要低下を招き、通貨防衛政策に新たな負担を与える可能性がある。また、暗号資産の匿名性が残る限り、マネーロンダリングや詐欺行為の温床となる懸念も拭えない。
規制を強化する一方で、過剰な統制がイノベーションの抑制につながるリスクも存在する。法の設計思想と運用実態のバランスを取ることが、今後の成否を左右すると考えられる。
法施行後の数年間は、制度が実経済にどのような影響を与えるかを見極める検証期間となるだろう。
ケニアが規制と成長を両立させるモデルケースとなるか否かは、官民の協調と透明性の確保にかかっている。
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