長野県松本市、AI予約バス「のるーと松本」の実績を公表 高齢者中心に利用定着

2025年10月14日、長野県松本市はAIを活用した予約制乗り合いバス「のるーと松本」の本格運行開始から半年間(4~9月)の利用状況を公表した。
寿エリア・梓川エリアともに目標の1日50人に届かなかったが、高齢層を中心に利用が広がっていることが明らかになった。
AI予約バス「のるーと松本」、半年の利用状況を公表
松本市は14日、AI(人工知能)を活用した予約制乗り合いバス「のるーと松本」の運行実績を発表した。
対象は2025年4月の本格運行開始から9月末までの半年間で、寿エリア(寿・寿台・松原の3地区)の1日平均乗車人数は46.9人、梓川地区は29.1人だった。
いずれも市が設定する目標値「1日50人(収支率20%)」に達しなかった。
寿エリアでは6月以降、平均乗車人数が50人前後で推移しており、一定の安定傾向を示している。
一方、梓川エリアでは運行初期に乗車数が減少し、9月時点でやや持ち直しているものの、依然として低調にとどまっている。
市公共交通課は「すぐに運行を止めるということにはならないが、定期的にキャンペーンなどの利用促進策を打つ必要はある」としている。
利用者の年代別構成では、両エリアとも70歳以上の利用が50%を超えた。
高齢者による買い物目的の利用が多く、これを踏まえて市は地元スーパーのデリシア(本社・松本市今井)と連携し、ポイント還元キャンペーンを11月に実施する。
対象は梓川店、寿店、寿豊丘店の3店舗で、期間は4日から28日まで。
サービスカウンターで乗車証明書とレシートを提示すると、プリペイド機能付きポイントカード「ピコカカード」に通常の10倍のポイントが付与される仕組みだ。
デリシア営業企画部の神戸剛幸部長は「市と同じ思いで地域社会に貢献したい」と述べた。
市公共交通課の大塚友宏課長は「収支率20%には届かなかったが、のるーとの存在が地域の中で着実に定着していると感じる。地域企業と連携したキャンペーンで利用促進に努めたい」とコメントした。
地域企業との連携が鍵か AI交通の持続性に課題も
今回の結果は、AIを活用した地域交通の定着と持続的運営の難しさを浮き彫りにしたといえる。
高齢者を中心に一定の利用が見られる一方で、若年層や通勤・通学利用の拡大には課題が残りそうだ。特に、収支率20%を下回る現状では、行政支援や地域連携による需要喚起が不可欠となるだろう。
デリシアとの協働によるポイント還元は、AI交通と地域経済を結びつける実証的な試みとして評価できる。地元企業との共同施策は、公共交通の利用促進だけでなく、地域の商業活性化にも寄与する可能性がある。
一方で、キャンペーン終了後の継続的な利用定着や、費用対効果の検証は今後の焦点となりそうだ。
松本市の取り組みは、全国各地で進むオンデマンド交通の実用化における地域密着型AI交通モデルの一つとして、今後も注目されるだろう。
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