さいたま市、「おたすけ学校AI」導入で校務効率化と学び改革を加速 教育ネットが実証データを公開

2025年10月14日、株式会社教育ネット(神奈川県横浜市)は、さいたま市教育委員会による「おたすけ学校AI」導入事例を公開した。
さいたま市立学校約6,000人の教職員を対象にした「生成AIを活用した校務支援の検証」において、文書作成の効率化や児童生徒との関わりの質向上が確認されたという。
生成AIが支える現場改革 「おたすけ学校AI」活用が広がる
さいたま市は2022年に「スマートスクールプロジェクト(SSSP)」を始動し、教育現場への生成AIの導入を推進してきた。
その一環として、2024年9月より「おたすけ学校AI」の実証導入を市立小・中・特別支援学校で開始。教職員の負担軽減と教育の質向上を目的に、校務データや文書作成支援の活用が進められている。
教育ネットが2025年6月から8月に実施した利用ログ調査では、「自由に質問する」ボタンが最も多く利用され、次いで「おたより作成」「所見作成支援」が続いた。
疑問があれば「おたすけ学校AI」に質問し、さらに校務や保護者向け文書の作成支援にAIを活用していることが明らかになった。
現場の教員からは「文書作成にかかる時間が減り、授業準備に集中できるようになった」「子どもと接する時間を確保できるのが大きい」といった声が寄せられた。
さいたま市教育委員会は今後も、教員による生成AIの日常的活用を推進し、市全体の校務効率化を目指す。また、児童生徒による深い学びを実現するため、生成AIを正しく活用する力の育成を重視し、現場に伴走しながら生成AI時代にふさわしい学びを研究・推進する方針だ。
さらに、株式会社教育ネットは、「これからも現場の実情やニーズに寄り添いながら、教育DXの推進と校務支援の両面から、学校現場の変革に貢献してまいります。」と発信している。
AIと共に進化する学校現場 教員支援から児童の活用教育へ
さいたま市の「おたすけ学校AI」導入は、教育現場における生成AIの本格活用を象徴する取り組みと言える。
最大の利点は、教員の事務負担を軽減し、児童生徒と向き合う時間を増やす構造改革ができることだろう。文書作成支援や質問応答といった反復業務をAIが担うことで、教員が本来注力すべき授業準備や教育的対話に集中できる環境が整いつつある。
一方で、今後はAIへの過度な依存による判断力の低下や、情報の正確性をどう担保するかといった課題も浮上すると予測できる。AIの回答を無批判に受け入れる風潮が生まれれば、教員自身の判断力や文章構成力の低下を招く懸念もある。
今後、AIが「教える」から「共に学ぶ」存在へと進化すれば、教育の構造自体が変わる可能性がある。
ただし、AIの進化速度は人材育成や制度整備を上回るため、倫理指針やガバナンスの整備が急務となるだろう。自治体や企業が連携し、教育データの透明性と安全性を確保しながら、地域特性に応じたAI教育モデルを構築することが求められそうだ。
さいたま市の取り組みは、その出発点として全国的な議論を喚起する契機になると考えられる。
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