JR東日本、超電導送電で営業列車4万本に電力供給 鉄道インフラの省エネ化に道

2025年10月9日、JR東日本と伊豆箱根鉄道、鉄道総研は、超電導技術を用いた送電システムの実証により、営業列車約4万本への安定供給に成功したと発表した。
電力損失をほぼゼロに抑える送電が確認され、鉄道インフラの省エネ化と変電所集約への可能性が高まっている。
超電導き電システムで安定送電を実証、電力損失ほぼゼロに
鉄道総研は、伊豆箱根鉄道およびJR東日本の協力のもと、超電導き電システム(※)を営業線に導入し、1年以上にわたる実証運転で安定した送電を確認した。
駿豆線大仁駅に設置されたシステムは、2024年3月の稼働開始以来、季節を問わず冷却状態を維持し、約4万本の営業列車に電力を供給している。
始発から終電までの運転中、電流変化がほぼ一定に保たれ、良好な超電導状態を維持できたという。
さらに、JR東日本の中央本線でも、鉄道総研日野土木実験所において実証試験を実施した。
都市圏の高負荷環境を想定した検証では、最大4500アンペアの電流供給と最大2889アンペアの回生電流を安定して処理できることが明らかになった。
その際、ケーブル両端での電圧差はほとんど発生せず、複数列車が同時に加速・減速を行う状況でも、システムが安定的に機能することが実証された。
これにより、都市鉄道における超電導送電の実用性が初めて確認された。
本研究は、国土交通省の鉄道技術開発補助金の支援を受け、NEDOおよびJSTによるプロジェクトの一環として進められたものである。
※超電導き電システム:極低温下で電気抵抗がゼロになる超電導体を利用した送電技術。従来の銅線より大電流を損失なく送ることができ、鉄道など高負荷インフラでの省エネ効果が期待される。
鉄道電力の革新に期待、社会実装へ長距離化と経済性が鍵
今回の成果は、鉄道インフラのエネルギー効率を大幅に向上させる可能性を示した。
超電導送電は電力損失がほぼゼロであるため、変電所の数を減らし、設備管理の省力化につながると見込まれる。
また、都市圏の稠密線区でも安定運用が確認されたことから、将来的には大都市鉄道全体への展開も視野に入るだろう。
一方で、長距離化やコスト面では課題も残る。
現行のシステムではケーブル接続技術の高度化や冷却性能の強化が求められており、保守・運用コストをいかに低減するかが社会実装の鍵を握るとみられる。
鉄道総研は今後、材料開発と運用技術の改良を進める方針だ。
超電導送電の実用化は、鉄道の省エネ化のみならず、再生可能エネルギーの効率的な利用や産業電力網の最適化にも寄与する可能性がある。
鉄道インフラを基盤に、エネルギー循環型社会への一歩を示す取り組みとして注目される。











