ビザ、国際送金に「ステーブルコイン前払い」導入へ Visa Directで試験運用開始

2025年9月30日、米決済大手ビザ(Visa)は、リアルタイム決済ソリューション「Visa Direct」においてステーブルコインを用いた前払い機能を試験的に導入すると発表した。
国際送金の効率化を狙い、企業や金融機関に新たな資金運用の選択肢を提供する。
Visa Directでステーブルコイン前払いが可能に
ビザは今回、国際送金における資金移動の柔軟性を高めるため、企業が法定通貨ではなくステーブルコイン(※)をVisa Directに事前入金できる仕組みを試験導入した。
入金されたステーブルコインはビザが預託金として扱い、送金資金として即時に利用可能となる。
従来、企業はクロスボーダー送金のために大規模な法定通貨を拘束しなければならなかったが、この仕組みにより資金活用の効率が大幅に改善される。
さらに、数日かかっていた送金が数分で完了し、財務オペレーションが迅速化する点も大きな利点といえる。
ビザの商業・送金ソリューション部門プレジデント、クリス・ニューカーク氏は「クロスボーダー決済は長らく旧態依然とした仕組みに縛られてきた」と指摘し、新機能が世界中で資金移動を即時可能にする基盤を整えると強調した。
今回のパイロットは、越境送金を行う銀行や送金事業者、金融機関などが対象であり、2026年には規模を拡大する計画だ。
さらに、ビザはアフリカのステーブルコイン決済プラットフォーム「イエローカード」との提携も進めており、Visa Directとの統合テストを通じて越境資金移動の選択肢拡大も視野に入れている。
※ステーブルコイン:法定通貨や資産に価値が連動する暗号資産で、価格変動が小さく決済手段としての安定性が高いとされる仮想通貨。
ステーブルコイン送金の利便性と潜在リスク
今回のビザによる試験導入は、企業にとって資金運用効率の向上や送金スピード改善という明確なメリットをもたらす。事前に法定通貨を拘束せずに即時送金できる仕組みは、資金流動性を大幅に高めることになる。
将来的には、企業だけでなく金融機関全体のオペレーション効率化が期待されるほか、クロスボーダー決済の競争環境にも変化をもたらすだろう。
Visa Directを活用したステーブルコイン送金が一般化すれば、即時決済が標準化する可能性もある。
ただし、ステーブルコインに関する規制や市場流動性の変化が送金に影響するリスクは無視できない。安定性が高いとはいえ、発行体の信用リスクや各国の金融規制が国際送金に波及する懸念がある。
さらに、アフリカをはじめ新興市場への応用は、従来の送金コスト削減やアクセス向上に寄与する一方、地域ごとの規制対応や技術インフラの整備が課題として残る。利便性の向上とリスク管理の両立が今後のカギになると考えられる。











