ドイツ首相、AIとデジタル改革で経済再建 官僚主義削減と5000億ユーロ投資計画

2025年10月1日、ドイツのメルツ首相はベルリン近郊で会見を行い、AI活用とデジタル化を軸とした行政改革と5000億ユーロ規模の投資計画を打ち出した。長期低迷する経済を立て直す狙いであり、官僚主義の大幅削減も打ち出した。
行政改革と投資で競争力回復を狙うドイツ
メルツ首相は1日の記者会見で、ドイツ経済の競争力を高めるための包括的な政策を公表した。中心となるのはAI技術とデジタル化を行政に導入する取り組みで、車両登録のオンライン化や24時間以内に会社設立を可能にするプラットフォーム、裁判所やビザ(査証)の実証プロセスを支援するAIツールなど23の主要プロジェクトを示した。これにより国民生活を改善する可能がある。
さらに、医療分野では外国資格の認定を迅速化し、高度技能を持つ移住者の労働市場への統合を進める。デジタル庁を新設して制度改革を推進し、官僚的手続きを効率化する方針だ。数年間で行政要件を25%削減することで、年間160億ユーロ規模のコスト削減効果が見込まれる。
財政面では、防衛やインフラを中心に5000億ユーロを投じ、従来の財政規律重視から転換を打ち出した。ドイツはG7で唯一、2024年に2年連続でマイナス成長に陥っている。メルツ首相は「首位の座に返り咲くことを目指している」と述べ、ドイツ連邦議会に具体的法案を提出する意向を示した。
成長促進と財政リスク 改革の行方に注目
今回の改革は行政効率を高め、企業活動の迅速化につながる可能性が大きい。
過度な官僚主義が年間1500億ユーロ近い損失をもたらしているとの調査もあり、削減が実現すれば国際競争力の改善につながる可能性がある。
外国人材の就労機会拡大も、人手不足に悩む産業界にとって追い風になるだろう。
一方で、5000億ユーロ規模の投資は財政負担の増大を伴う。均衡財政からの転換は短期的な景気押し上げ効果が期待できる反面、国債発行や赤字拡大につながる可能性もある。
加えて、AIやデジタル技術の導入にはデータ保護や公平性確保といった課題もつきまとう。特に司法や移民審査といった分野では、透明性の確保が重要になる可能性がある。
ドイツの挑戦は、欧州全体のデジタル競争力の行方を占う試金石になりうる。
効率化と成長促進を実現できれば先導的事例となるが、制度設計を誤れば財政悪化や国民の信頼低下につながるリスクもある。
改革の実行力と持続性が、再生への道筋を左右することになるだろう。
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