電通総研、マルチRAGエージェントを年内提供 業務自動化と精度向上を狙う

2025年9月30日、電通総研はAIエージェントプラットフォーム「Know Narrator AgentSourcing」に新機能「マルチRAGエージェント」を追加し、年内に提供を開始すると発表した。複数エージェントの協働により、社内問い合わせやレポート作成など高度な業務自動化を実現する。
複数エージェントが協働し、回答を統合
今回発表された「マルチRAGエージェント」は、同社が展開するAIエージェントプラットフォーム「Know Narrator AgentSourcing(ノウ ナレーター エージェントソーシング)」上で動作する新機能である。
この仕組みは、複数のRAG(Retrieval-Augmented Generation)(※)エージェントが専門分野ごとに役割を分担し、情報検索と生成処理を分散して行う点に特徴がある。これにより、従来の単一RAGモデルよりも高精度かつ信頼性の高い回答が期待できるという。
第1段階として、「複数エージェントによる回答統合」が2025年10月には提供される予定だ。
具体的には、社員が「育児休業」について質問した場合、人事・労務・給与など複数部門の情報が自動的に収集され、統合された回答が提示される。利用者は問い合わせ先を迷う必要がなく、ワンストップで正確な情報を得られるようになる。
さらに2025年12月には、「柔軟なエージェント構成と協働設定」が実装される。
エージェントごとに役割や協働ルールを細かく設定できるため、企業の業務フローに合わせた高度なカスタマイズが可能になるとされる。
※RAG(Retrieval-Augmented Generation):外部データベースや文書を検索し、その情報をもとに生成AIが回答を作成する手法。検索と生成を組み合わせることで、汎用モデル単体よりも正確な応答が可能になる。
参考:「Know Narrator AgentSourcing」について
https://aitc.dentsusoken.com/products/knownarratoragentsourcing/
高度化するAI協働 期待とリスクの両面
「マルチRAGエージェント」は、単なる効率化にとどまらず、企業のデータ活用戦略を大きく変える可能性を秘めている。
複数エージェントの協働により、従来は人が行っていた複雑な情報整理や分析を自動で行えるため、知的業務の自動化が一層進むと考えられる。これにより、社内問い合わせや定型レポート作成の時間を削減し、社員がより創造的な業務に注力できる効果が期待される。
一方で、AIが生成する情報の透明性や責任問題の課題も残る。
複数エージェントによる統合回答は便利であるが、情報源の正確性や出典の明示が不十分な場合、利用者が誤った判断を下すリスクがある。また、外部システムとの連携が強化される段階では、セキュリティやガバナンスの脆弱性が露呈する可能性もあるため、慎重な運用が求められるだろう。
また、AIに業務を委ねる領域が広がることで、社員のスキル低下や意思決定力の形骸化の懸念もある。導入企業には、AIをあくまで「補助的な知的パートナー」と位置づけ、人間の判断力を補強する方向で活用する姿勢が求められる。
電通総研は「Know Narrator」シリーズの機能拡充を継続し、マルチエージェントの組み合わせや連携機能を発展させる方針を示している。
今後は、企業の業務効率化と同時に、AIと人間の協働の在り方を問い直す契機が訪れるかもしれない。
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