さくらインターネット、「NVIDIA H200」採用スパコン「さくらONE」提供開始

2025年9月30日、大阪のさくらインターネット株式会社は「NVIDIA H200 GPU」を搭載したマネージドスーパーコンピュータ「さくらONE」の提供を開始した。
同社が運営する石狩データセンターに構築され、生成AIや科学技術分野の大規模計算を支える基盤として利用可能になる。
「NVIDIA H200」搭載の「さくらONE」提供開始、最大440基GPUを活用
さくらインターネットは2025年9月30日、「NVIDIA H200 GPU」を採用したマネージド型スーパーコンピュータ「さくらONE」を提供開始した。
同システムはGPUメモリ141GBを備えた「NVIDIA H200 GPU」を1台あたり8基搭載したサーバーで構成され、最大55台まで拡張可能だ。
合計で440基のGPUリソースを同時利用できる設計となっている。
システムは北海道石狩市の石狩データセンター内のコンテナ型設備で稼働し、直接液体冷却方式(※)を導入することで効率的な熱管理を実現している。
電力制限を設けない設計により、GPU性能を最大限に引き出す構成が採用されている。
利用用途は幅広く、気象予測や防災シミュレーション、医療画像処理、ゲノム解析、エネルギー分野での流体や構造解析などが想定されている。
さらに自動車・航空宇宙分野の数値流体力学(CFD)や衝突解析、金融サービスにおける大規模リスク分析、材料科学やAIの大規模モデル学習などにも適用可能である。
「さくらONE」は計算リソースの提供に加えて、ジョブスケジューラによる計算管理、利用状況の可視化、アカウント管理や障害対応を含むマネージドサービスを提供する。
最低利用期間は30日で、1日単位のリソース予約も可能となっており、試験導入や段階的拡張にも対応している。
※直接液体冷却方式:サーバー内部の発熱部品に冷却液を直接循環させ、効率的に熱を除去する方式。空冷に比べ冷却効率が高く、省電力や安定稼働に寄与する。
生成AIと研究開発を支える計算基盤の意義と課題
「さくらONE」の提供は、国内の研究機関や企業が迅速に高性能な計算環境を利用できる点で大きな意義を持つ。
特に生成AIや科学技術分野では膨大な計算リソースが必要とされるため、スパコンの利用を自社で整備せずに実現できることは開発効率を高める利点になる。
また、1日単位で利用できる柔軟性は、短期的なプロジェクトや試験導入を行いたい企業にとって魅力的だ。
一方で、GPUを大量に稼働させる環境は高い電力消費を伴う。
液体冷却方式による効率化が導入されているとはいえ、長期的にはエネルギーコストや環境負荷が懸念される点だ。
さらに、海外クラウド大手との比較では、提供規模や国際的なブランド力で劣る面もあり、差別化戦略が不可欠になるだろう。
今後「NVIDIA Blackwell GPU」を搭載した後継システムの提供が予定されていることから、性能強化やランキング上位への挑戦を通じ、国内外での存在感を高められるかが焦点になる。
生成AIや高度科学計算を支えるインフラ競争が激化する中、「さくらONE」がどこまで定着し、産業全体の発展に寄与できるかが注目される。
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