日本総研・JSOL・MKFA、農業AI「V-farmers®」実証 1年間タマネギ栽培を検証

2025年9月29日、日本総合研究所、JSOL、みらい共創ファーム秋田は、農業AIエージェントサービス「V-farmers®」の実証実験を秋田県大潟村で開始したと発表した。
対象はタマネギで、経営管理と栽培支援の効果を1年間にわたり検証する。
農業AI「V-farmers®」を秋田で実証、タマネギ栽培効率化へ
日本総研、JSOL、MKFAは、農業AIエージェントサービス「V-farmers®」を用いた実証を秋田県大潟村で開始した。
期間は2025年9月から2026年9月までで、6ヘクタールのタマネギ圃場を対象に実施される。
経営管理支援、栽培支援、農業用生成AIの精度検証、スマート農機との連携可能性などを調査する。
背景には、農業従事者数が1999年比で119万人減少し、平均年齢も69.2歳に達する高齢化問題がある。農業の担い手不足やノウハウの断絶を防ぐため、効率化と知見の継承が急務となっている。
また、対象作物のタマネギは国指定の重要野菜であるが、夏季に端境期が生じることにより国産品が不足しており、輸入に頼らざるを得ない状況が続いている。
東北地方では端境期の解消に向け新たな生産拡大が進んでおり、本実証はその課題解決に直結するものとされる。
V-farmers®は、作業計画や農機具配分の自動化、ベテラン農業者の知見を活かしたマニュアル提供、多言語対応による外国人労働者支援、OCRによる出荷管理などを備える。
将来的には稲作など他品目への展開も視野に入れている。
効率化とノウハウ継承に期待、農業AIが描く持続可能な未来
今回の実証は、農業の高齢化と人手不足という構造的課題に対する一つの解答になる可能性がある。
AIによる作業スケジュール最適化や病害リスク分析は、新規就農者でも早期に安定した収穫を得やすくする効果が期待できる。
また、多言語対応による技能習得支援は外国人労働者の戦力化を後押しし、地域農業の人材確保に資するだろう。
実証で得られる知見は、気候変動に伴う栽培地の変化や新作物導入の支援にも応用できると考えられる。
将来的には、米をはじめとする主要作物への展開が想定され、食料安全保障に直結する成果が期待される。
AIを活用した「収益性の高い農業」の実現は、日本農業の持続性を左右する重要な実験段階に入ったと言える。
一方で、AIシステムの導入コストや運用体制の整備は課題として残りそうだ。
特に小規模農家にとっては、費用負担が重くなる恐れがあるため、導入効果を広く波及させるには政策支援や共同利用モデルの検討が不可欠だろう。











