UKファイナンス、ポンド建てトークン化預金GBTDの実証実験開始 6銀行が参加

2025年9月25日、英国の銀行・金融サービス業界団体UKファイナンスは、ポンド建てトークン化預金プロジェクト「GBTD」の実証実験を開始したと発表した。
バークレイズやHSBCなど大手6銀行が参加し、金融インフラの高度化を目指す取り組みである。
英大手6銀行が参加するGBTD実証実験始動
UKファイナンスは、ポンド建てトークン化預金(※)を実現するプロジェクト「GBTD(Great British Tokenised Deposit)」の実証実験を発表した。
参加するのは、バークレイズ、HSBC、ロイズ・バンキング・グループ、ナットウェスト、ネイションワイド、サンタンデールの6行である。
さらに、テクノロジー企業クアント、コンサルティング大手イーワイ、法律事務所リンクレイターズも支援に加わる。
本実証実験は、2024年9月に成果が示されたRLN(規制負債ネットワーク)の実験を基盤として進められる。
RLNは商業銀行マネー、中央銀行マネー、電子マネーを共通基盤で処理可能にする金融市場インフラであり、実証では不正削減や住宅購入手続きの効率化が確認された。
今回のGBTD実証は、トークン化預金とプログラム可能な支払いを実用ユースケースに適用することを目的とする。
英国政府の成長戦略「DIGIT」や「NPV」にも連動し、2026年半ばまで続けられる予定だ。
対象ユースケースは三つあり、個人間支払いの不正削減と信頼性向上、住宅ローン借り換えプロセスの改善、トークン化預金とデジタル資産のシームレスな交換が含まれる。
また、実験で使用されるプラットフォームは相互運用性を備え、トークナイゼーション・アズ・ア・サービスを提供する。
これにより、独自に機能を持たない金融機関や企業でも外部サービスを介して参加可能になる。
※トークン化預金:銀行預金をブロックチェーンなどのデジタル台帳に記録し、移転可能にしたもの。既存の銀行預金と同等の価値を持つが、取引効率化やプログラム可能な支払いを可能にする。
トークン化預金が拓く決済効率化と制度設計の課題
GBTDの実証が示す可能性は、金融取引の効率化と信頼性向上にある。
特に、オンライン取引や住宅ローンといった生活に密接する領域で、透明性や不正防止効果が期待できる。
さらに、デジタル資産との交換が容易になれば、新たな金融商品やサービスが生まれる土壌を形成できるかもしれない。
一方で、実用化に向けては課題も存在する。
第一に、既存の銀行システムや規制枠組みとの整合性である。従来型の決済インフラと併存させながらも、利用者保護や法的安定性を担保する必要がありそうだ。
第二に、トークナイゼーション・アズ・ア・サービスの導入に伴うセキュリティ確保も重要だ。外部提供者を介した運用が広がれば、データ保護や不正アクセス防止のリスク管理が不可欠となるだろう。
プロジェクトが示す成果が他国の金融当局にも波及すれば、トークン化預金は国際的な標準に近づく可能性もある。
ただし、各国の法制度や市場特性の違いは、導入速度に大きく影響するだろう。
今後、英国が金融デジタル化の先導役を果たせるかどうかは、2026年までの実証過程にかかっていると言える。











