米アンソロピック、海外人員を3倍へ 東京に初のアジア拠点を設置

2025年9月26日、米AI企業アンソロピックが海外人員を年内に3倍へ拡大し、東京にアジア初の拠点を開設すると発表した。AIモデル「クロード(※)」の国際需要増加を受けた対応で、欧州でも採用強化を進める。
急増するクロード需要、東京拠点開設で国際展開加速
アンソロピックは米国外での利用拡大に対応するため、海外人員を年内に3倍へと増強し、応用AIチームも5倍規模に拡張する計画を明らかにした。新規採用はダブリン、ロンドン、チューリッヒを中心に100人以上を予定しており、欧州での拠点を増やす。加えて、アジアでは初となる東京オフィスを設置し、日本市場への進出を本格化させる。
同社によると、一般消費者によるクロードの利用の約8割は米国外に集中している。特に韓国、オーストラリア、シンガポールでは1人あたりの利用量が米国を上回っており、グローバル市場での需要の強さが鮮明となっている。
アンソロピックはアルファベットやアマゾンからの出資を受け、企業価値は1830億ドルと評価されている。法人顧客数はこの2年間で1000社未満から30万社以上へ急増し、売上高も年初の約10億ドルから8月には50億ドル超に増加している。国際部門のマネジングディレクター、クリス・チャウリ氏は「ロンドンの金融サービスから東京の製造業に至るまで、需要は驚異的だ」と述べ、クロードが重要業務を支える存在として信頼を得ていることを強調した。
※クロード:アンソロピックが開発する生成AIモデルで、自然言語処理やコーディング支援に強みを持つ。業務アシスタントやカスタマーサポートなど法人利用も拡大中。
世界展開が広げる可能性と急成長が招くリスク
今回の大規模な拡張戦略は、アンソロピックが米国中心の企業から本格的なグローバル企業へと進化する転機を示す可能性がある。東京拠点の設立は、日本の製造業や金融業界をはじめとする産業のデジタル化を後押しする可能性があり、企業にとっては高度なAIを業務へ取り入れる新たな選択肢となるだろう。
法人顧客が急増する中、クロードはコーディング支援や自然言語処理に強みを発揮しており、国際市場での成長余地は大きいと考えられる。利用の中心がすでに米国外にシフトしている点を踏まえれば、今回の拡張は需要に即した自然な流れになる可能性もある。
一方で、急成長には複数のリスクが伴う。採用拡大や拠点新設に伴うコスト負担は短期的に収益を圧迫する要因になり得る。また、国ごとに異なるデータ保護やAI規制への対応は、今後の事業展開を左右する課題となる可能性がある。競合としてオープンAIやグーグルなど大手が控えており、技術力だけでなく市場ごとのローカライズ戦略が求められると考えられる。
国際市場での拡張が持続的な成長へつながるかどうかは、各地域での顧客基盤強化と規制対応の巧拙に左右される可能性がある。今回の一手は新たな成長機会を切り開く一方で、競争リスクとコスト増加の試金石になる可能性もある。
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