ペイパルのPYUSD、USDT特化チェーン「ステーブル」で利用可能に クロスチェーン拡張が加速

2025年9月22日、米決済大手ペイパルが発行する米ドル建てステーブルコイン「PYUSD」が、レイヤー1ブロックチェーン「ステーブル(Stable)」で利用可能になるとステーブル公式ブログで発表された。クロスチェーン技術を活用した利用拡大が見込まれる。
PYUSDがStableに統合 レイヤーゼロ技術で相互運用性を実現
ステーブルはテザー社発行のUSDTを中心に設計されたブロックチェーンで、取引の高速処理と安定した手数料体系を実現している。
同プロジェクトは2025年7月末に実施したシード資金調達ラウンドで2,800万ドル(約41億円)を集め、ネットワーク拡充や人材採用に活用する方針を示していた。
今回の統合では、PYUSDのクロスチェーン対応が大きな焦点となる。
ステーブルはオンランプやオフランプ機能の整備も進めており、異なるチェーン間での利用拡大を視野に入れている。その基盤技術として採用されたのが、相互運用性プロトコル「レイヤーゼロ(LayerZero)」である。
さらに、ペイパルの投資部門であるペイパルベンチャーズがステーブルの資金調達に参加していたことも明らかになった。投資額は非公開だが、PYUSDの展開と同チェーンとの連携を強化する布石とみられる。
また、直近の動きとして9月19日には、ネイティブのPYUSDを拡張した「PYUSD0」が7つのチェーン上で展開されることがレイヤーゼロから発表された。
PYUSD0はオムニチェーン・ファンジブル・トークン(OFT)標準に準拠し、パーミッションレス版として設計された点に特徴がある。
クロスチェーン化が示す可能性と市場への影響
PYUSDのステーブル対応は、ステーブルコイン市場における競争を加速させる契機になると考えられる。
これまでUSDTが独占的な地位を築いてきたが、PayPalのブランド力を背景にしたPYUSDが選択肢として加わることで、利用者や企業の分散ニーズに応える環境が整いつつあると言える。
メリットとしては、異なるブロックチェーン間での相互運用が進む点が大きい。
レイヤーゼロの技術を利用することで、ユーザーは複数のチェーンを跨いで資産を移動でき、取引コストや時間的ロスの削減につながるだろう。これにより、Web3の決済・送金分野でPYUSDの実用性が高まると見られる。
一方で、ステーブルコインが複数チェーンで展開されることは、セキュリティリスクや規制強化の対象となる可能性を孕む。
特にパーミッションレス型トークンは、金融当局による監視が難しいことから、規制議論を促す要因になると考えられる。
将来的には、PYUSDとUSDTが同一チェーン上で共存することで、ユーザー基盤や流動性がどのように分配されるかが注目点となるだろう。競合関係の中で、どのステーブルコインが決済やDeFiの中核的存在に成長するかが、次のフェーズを左右すると言える。
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