トランプ系TMTG、Crypto.comを買収完了 6.8億CRO取得で戦略提携を強化

2025年9月5日、米国のトランプ大統領が率いるメディア企業TMTG(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ)は、海外暗号資産取引所Crypto.comの買収契約を完了したと発表した。
今回の取引でTMTGはCRO(クロノス)を大規模に取得し、両社の戦略的提携が一段と強化される見通しだ。
TMTG、CRO大量取得とサービス統合で提携を拡大
TMTGは、暗号資産取引所Crypto.comとの契約を締結し、6億8,440万CROを取得した。
取得額は1CROあたり約15.3セントで、支払いはTMTG株式と現金を50%ずつ充当する方式が採用された。取得分は流通供給量の約2%にあたる。
取得したCROはCrypto.comの機関投資家向け保管サービスで管理され、ステーキングを通じて収益化される予定だ。
また、TMTGが発行する株式と取得CROにはロックアップ(※)期間が設定され、短期的な売却による価格下落を防ぐ仕組みも整えられている。
TMTGは新たに設立したデジタル資産トレジャリー企業「トランプ・メディア・グループ・CRO・ストラテジー」を通じ、CRO流通供給量の約19%を追加取得する計画を進めている。
今回の提携は8月に発表された戦略的パートナーシップに基づいており、TMTGのSNS「トゥルース・ソーシャル」や動画配信サービス「トゥルース・プラス」にCrypto.comのウォレット基盤が統合される。
これによりCROはユーティリティトークンとして採用され、サービス内決済などで利用可能となる予定だ。
※ロックアップ:株式や暗号資産の売却を一定期間制限する仕組み。市場への急激な供給増加を防ぎ、価格の安定を目的とする。
CRO活用の拡大がもたらす期待とリスク
今回の取引でTMTGは、自社のSNSや配信事業に暗号資産を組み込む基盤を得たと言える。
CROを活用した決済や報酬制度が整えば、ユーザーの参加意欲を高める効果が見込まれ、Crypto.comとの協業により国際的なブランド力向上も期待できる。
一方で、暗号資産市場は価格変動が激しいため、資産価値の不安定さというリスクを抱えている。TMTGが取得した大量のCROも、市場全体の下落局面では評価損を被る可能性があり、株主から懸念の声が上がる余地もあるだろう。
ただし、ロックアップによって短期的な売り圧力は抑制されているため、中長期的に見れば安定した運用が期待できる。
ステーキング収益が収益基盤に加われば、TMTGの事業モデルはメディア依存から資産運用型へと拡張する可能性がある。
今後の注目点は、この提携が他のWeb3企業や金融機関に波及するかどうかだろう。
もし成功事例として定着すれば、米国におけるメディアと暗号資産の融合モデルの一つの潮流となるかもしれない。