生成AI学習に著書を無断利用と訴えられた米アンソロピック、2200億円支払いで和解へ

2025年9月5日、米AI新興企業アンソロピックが、作家の著書を無断で学習に使用したとして提起されていた著作権侵害訴訟で和解に合意した。
和解金は15億ドル(約2200億円)に上り、AI関連訴訟では過去最大規模とみられる。
米アンソロピック、著作権侵害で過去最大級の和解金
米国の作家3人は、自らの著書が無断で生成AIの学習に利用されたとして、アンソロピックを相手取り著作権侵害で提訴していた。
訴訟資料によれば、同社は海賊版サイトから入手したとされる約50万冊の書籍を学習データとして使用していたという。
カリフォルニア州の連邦地裁は6月、合法的に購入した書籍を利用する場合は侵害に当たらないと判断した一方、海賊版を利用した学習は著作権侵害と認定していた。
今回の和解で、アンソロピックは1冊あたり3000ドルを2年以内に支払うことに同意した。
総額は15億ドル(約2200億円)に達し、同社は海賊版の書籍データを削除する方針も明記した。
和解金額としては著作権訴訟の歴史において過去最大規模とされる。
原告側弁護士は声明で「この和解は、AI企業に著作権者への支払いを義務づける前例を打ち立てるものとなる」と強調した。
一方でアンソロピックは「引き続き安全なAIシステムの開発に取り組む」との声明を発表し、安全性を維持する姿勢を打ち出している。
米国では現在、生成AIを巡って少なくとも40件前後の訴訟が進行しており、今回の和解はその流れに大きな影響を与える可能性がある。
著作権者保護の観点から、今後の訴訟判断における重要な参照点となるとみられる。
前例が示すAI業界の分岐点 権利保護と技術進化のせめぎ合い
今回の和解は、生成AI業界にとって大きな節目となる。
メリットとして、著作権者への金銭的補償が確立され、クリエイター保護の基盤が形成されることが挙げられる。
これにより、AI学習データの透明性やライセンス契約の整備が加速するだろう。
出版社や作家にとっては、無断利用に歯止めがかかるという心理的安心感も広がると予想される。
一方で、AI企業にとっては莫大なコストが新たなリスクとなる。
学習データの合法性を担保するための契約や調達コストが上昇し、研究開発のスピードや収益性に影響を及ぼす懸念がある。
特に資金力の乏しい新興企業には大きな負担となり、業界の再編や淘汰が進む可能性もある。
さらに、今回の和解は米国内にとどまらず、国際的な議論にも波及するだろう。
各国で進むAI規制の議論において、著作権保護と技術発展のバランスが一層問われることになるとみられる。
今後は、著作権者・企業・規制当局の三者が協調し、持続可能なAI開発のルール形成を進められるかどうかが焦点になると考えられる。
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