アップルも著作権侵害訴訟に直面 AI学習で無断利用と集団訴訟提起

2025年9月5日、米アップルは人工知能(AI)の学習において著作権を侵害したとして、カリフォルニア州の連邦地裁で集団訴訟を起こされた。原告は著述家らで、同社が同意や補償なしに著作物を利用したと主張している。
アップル、著者の同意なしで学習データ利用か
今回の訴訟は、AIの学習を巡る著作権問題が再び注目される契機となった。原告の著述家2人は、アップルが著作物を無断で使用しながら情報源を明示せず、さらに補償を一切行っていないと非難している。訴状では「アップルはこの潜在的に魅力を秘める事業に貢献した著者たちに相応の対価を払おうとしなかった」と強調された。
AI業界では、学習の際の著作権侵害をめぐる訴訟が相次いでいる。特に生成AIの開発にあたり、膨大な書籍や記事、コンテンツが利用されてきたが、その多くが著作者の同意を経ていない点が問題視されている。既にニュースメディアなどがテック企業に対し訴訟を提起しており、産業全体に広がる動きとなっている。
同日には、対話型AI「クロード」を提供するアンソロピックが、著作物を無断利用したとする著述家グループとの訴訟で15億ドルを支払い和解することに合意したとしている。
AI開発と著作権の衝突 和解金拡大で業界のコスト増懸念
AI開発における著作権を巡る攻防は、今後さらに激化するとみられる。企業側にとっては高品質なモデルを構築するために多様なデータが必要不可欠だが、著作権者への補償を怠れば訴訟リスクは避けられない。今回のアンソロピックによる巨額和解は、他の企業にとっても新たな「前例」となり、アップルを含む大手各社が数十億ドル規模の負担を迫られる可能性もある。
一方で、著作権者にとっては正当な対価を得る機会が広がることになる。特に書籍や記事といったテキスト資産を持つ著者にとって、これまで無償で利用されてきた知的財産が新たな収益源になるとの期待もある。ただし、和解や賠償が常態化すれば、開発コストの増大がAIサービスの利用料や製品価格に転嫁される懸念も拭えない。
今後は、学習データの利用ルールを明確にする法整備や業界自主規制の強化が不可欠になるだろう。アップルを含む大手各社がどのような対応策を打ち出すかが、AI開発の持続可能性を左右すると言える。