米SEC、仮想通貨規制を転換 2025年規制アジェンダで新方針

2025年9月4日、米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は「2025年規制アジェンダ」を公表した。
仮想通貨資産の規制枠組みを明確化する新方針を示し、米国の市場環境改善が本格化する見通しだ。
SEC、仮想通貨規制の新ルール提案を明記
米SECが公表した「2025年規制アジェンダ」では、仮想通貨の発行、保管、取引に関するルール策定を最優先事項として位置づけた。
従来の曖昧な規制状況を改め、市場参加者が安心して活動できる確実性を提供することが狙いだ。
新アジェンダでは、イノベーション支援や資本形成の促進も盛り込まれている。
具体的には、企業が資金を調達しやすくする制度の簡素化や、投資家が民間企業にアクセスしやすくなる措置により、市場参入の障壁を下げる方向性が示された。
また、バイデン前政権下で設定された規制項目の多くを撤回する方針も発表された。
規制の「量」ではなく「適切性と効果性」を重視する方向へと転換した格好である。
9月2日に商品先物取引委員会(CFTC)と共同で示したスポット取引に関する規制緩和方針とあわせ、仮想通貨市場における米国の政策環境は大きな変革期を迎えている。
市場確実性の向上に期待 規制強化と緩和の両面リスクも
SECが新たな「2025年規制アジェンダ」を発表したことの最大のメリットは、これまで曖昧で不透明だった仮想通貨規制を明確化する姿勢を示した点にある。
発行、保管、取引の各段階で統一的なルールを策定することで、企業や投資家は法的リスクを把握しやすくなり、市場参入に伴う不確実性が減少すると考えられる。
また、資金調達制度の簡素化や投資家アクセスの拡大は、スタートアップの活性化や資本形成の効率化を促す契機になり得るだろう。
CFTCとの協調による規制緩和方針と合わせ、米国が国際的な金融市場で競争力を維持する狙いも透けて見える。
一方でデメリットも存在する。まず、規制を「適切性と効果性」にシフトさせる過程で、一部の既存ルールが撤回されることは監督空白を招くリスクがある。
市場参加者にとっては一時的に規制の変化が急速に進むことで、逆に不安が増幅する可能性もある。
また、イノベーション支援と投資家保護のバランスを誤れば、不十分なチェック体制のまま資金流入が加速し、詐欺的スキームや過剰投機が再燃する恐れがある。制度の設計次第でメリットがデメリットに転じる脆弱さを抱えていると言える。
今後の展望としては、SECが具体的なルール案を提示するプロセスが焦点になるだろう。
もし実効性のある規制が整備されれば、米国市場における仮想通貨取引の信頼度は高まり、機関投資家の本格参入を後押しする可能性がある。
資金調達のハードルが下がることで、新規プロジェクトが米国内で立ち上がりやすくなり、結果的にイノベーションの地盤強化につながると考えられる。