フランス発AI大手ミストラル、急成長で評価額140億ドル目前と報道 欧州AIスタートアップの新たな象徴に

2025年9月4日、米BloombergはフランスのAIスタートアップ「Mistral AI」が約20億ユーロ(約3,450億円)の資金調達を最終交渉中であると報じた。
実現すれば、同社は欧州有数のテック企業へと躍進することになる。
ミストラル、わずか2年で評価額3倍超に急伸
フランスのMistral AIは、2023年に元DeepMindやMetaの研究者らによって設立された新興企業で、わずか2年の短期間で欧州AI市場を代表する存在へと成長してきた。
今回の調達ラウンドは20億ユーロ規模とされ、成立すれば同社のポストマネー評価額(※)は140億ドルに達する。
これは2024年6月に行われた前回ラウンドでの58億ユーロの評価額から大幅な上昇となる。
Mistralの強みは、オープンソース言語モデルと欧州市場向けに特化したAIチャットボット「Le Chat」にある。
欧州のデータ主権や規制環境に配慮した開発姿勢が高く評価され、政府機関や企業ユーザーの関心を集めている。
過去にはAndreessen HorowitzやGeneral Catalystといった著名VCから10億ユーロ超の投資を受けており、国際的な信頼も厚い。
今回の資金調達に関してMistralはコメントを控えているが、報道が事実であれば創業から2年余りで世界的AI企業の一角に迫る計算だ。
欧州のテックエコシステムにおける位置づけが大きく変わる局面といえる。
※ポストマネー評価額:資金調達後に算定される企業価値。調達額を加算した後の評価額を指し、投資家が参入する際の基準となる。
欧州AIの新潮流 米中依存脱却へ期待と課題
Mistralの急成長は、欧州が米中主導のAI競争に一矢を報いる動きとして注目される。Dealroomによれば、2025年第1四半期の欧州AI投資額は前年同期比で55%増加し、すでに12社がユニコーン入りした。
スウェーデン発のAIコーディング基盤「Lovable」も設立から8か月で18億ドル評価を獲得しており、欧州全体での勢いが鮮明になっている。
本件におけるメリットとしては、欧州発のAIモデルが増えることで、地域の規制や文化に即したソリューションが提供可能になる点が大きいだろう。
特に、個人情報保護や著作権といった法的枠組みに準拠したAI技術は、政府や公共分野での導入を後押しすると考えられる。
一方で、巨額投資が短期間に集中することで、バリュエーションの過熱や投資回収リスクが高まる懸念もある。研究者や技術者の流動性が欧州内で確保できるかどうかも課題となりそうだ。
それでも、欧州が米国OpenAIや中国Baiduといった巨大勢力に依存せず、自律的なAI開発を進める可能性はかつてなく高まっていると考えられる。
Mistralの今回の資金調達が成功すれば、欧州AIの地位を押し上げる象徴的な出来事として歴史に刻まれるだろう。