JYPエンタ、AIアーティスト制作に着手 K-POPと人工知能の融合で次世代市場を狙う

2025年9月3日、韓国大手芸能事務所JYPエンターテインメントは、子会社BLUE GARAGEと共同でAIアーティストの制作に取り組むと発表した。TWICEやStray Kidsを擁する同社が、AIを活用した新たなアーティスト像の創出に挑む。
JYP、AI活用で「次世代アーティスト」創出へ
JYPエンターテインメントによる今回の取り組みは「AIがファンの名前を呼び、交流できる存在になり得るのか」という発想から出発している。K-POPのパフォーマンスや文化的要素にAI技術を組み合わせ、次世代のエンターテインメント像を提示する狙いだ。
同社は「AIアーティスト(※)でグローバルエンターテインメントの新しい未来を開いていく」と意気込みを示している。
BLUE GARAGEのチョン・ミンジョン共同代表も「エンターテインメントの本質をAIで再創造する最初の試みだ」と強調した。同氏はJYPのクリエイティブ力、ファンコミュニティの影響力、そしてAIの革新性を掛け合わせることで、グローバル市場に新しいK(韓国)コンテンツの未来を提示できると述べている。
※AIアーティスト:人工知能を用いて創作・活動する架空のアーティスト。映像生成や音声合成を駆使し、人間のように歌唱・交流を行う。
AIアーティストの可能性と課題 市場拡大か、それとも疑念か
JYPエンターテインメントによるAIアーティスト構想の最大の利点は、時間や距離といった物理的制約を超えて活動できる柔軟性にあると考えられる。人間アーティストが抱える体力的負荷やスケジュール調整の問題を回避でき、コスト削減にもつながるだろう。
また、AIならではの24時間稼働や即応性は、ファン対応の新たなスタンダードを生む可能性がある。特にグローバル市場では、現地活動を伴わずに多言語対応で展開できる点は競争優位となり得る。
しかし、課題も多い。まず、ファンがAIに本物の感情移入をできるかは未知数であり、人気の持続性に疑問が残る。生身の努力や偶発的な失敗といった「人間ならではの魅力」をAIが再現できるかは不透明だ。
また、著作権や収益配分の法的整備は追いついておらず、グローバル展開において摩擦を生むリスクもある。すでに日本や中国のバーチャルアーティストが直面している「一過性のブーム」に終わる危険性も否めない。